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監査・ガバナンスの質にメス 英政府が改革案公表

英当局は「ビッグ4」と呼ばれる4大監査法人グループの寡占を問題視してきた=ロイター

【ロンドン=篠崎健太】英政府は18日、会計監査や企業統治(ガバナンス)の質の向上をめざす改革案を公表した。監査業務の4大グループによる寡占状況を是正するために準大手以下の参入を促したり、財務報告について企業の取締役により大きな責任を負わせたりする。上場会社の経営破綻や会計不祥事が相次いだ反省から幅広くメスを入れる。

「監査と企業統治の信頼回復」と題する約230ぺージの報告書を、民間企業・エネルギー・産業戦略省がまとめた。7月上旬まで市場関係者や産業界から意見を募って最終案を固め、法制化につなげる。

監査ではまず、デロイト・トウシュ・トーマツやKPMGなど「ビッグ4」と呼ばれる4大法人に、主要企業の利用が集中している状況の是正を掲げた。英国では株価指数「FTSE350」採用の主要上場350社のうち、97%の外部監査人を4大法人が占めている。質の向上には競争が必要とみている。

対策の一つとしてFTSE350採用企業に対し、子会社などグループ企業の監査には4大法人以外を使うよう促す。競争当局が19年4月に提言した、2つ以上の法人による共同監査の義務化は見送った。ただし状況が改善しなければ4大法人の占有率に上限を設けることも検討する。

4大法人を対象に、監査業務とコンサルティングなど非監査業務の運営をグループ内で分離させることも盛り込んだ。監査事業に集中させ、利益相反のリスクを抑えるためだ。監督当局の財務報告評議会(FRC)は20年7月に運営分離を求める指針を発表済み。24年6月を期限とする完全実施に向けて各社は既に対応を進めている。

財務情報の開示内容をめぐる企業側の経営陣の責任も明確にする。重大な誤りや不正などが見つかった場合、取締役に制裁金や職務停止などの処分を当局が科せるようにする。役員報酬の差し止めや一定期間内の返還、経営破綻のリスクがある場合の配当制限なども可能にして、不適切な現金流出を防ぐ枠組みを整える方向だ。

適正な組織運営のルールや仕組みである「内部統制」に関し、年次報告書で実効性や運営状況を報告することを取締役に求める。監査法人には監査先の内部統制状況の評価を公表させることを検討する。監査でチェックすべき対象を財務以外にも広げる考えで、例として気候変動リスクへの対応を挙げた。

改革の背景には近年、上場大企業の倒産劇が相次いだことがある。18年1月に破綻した建設会社カリリオンのケースでは、経営悪化への警鐘を鳴らせなかった監査法人と、直前まで役員報酬や株主配当を大盤振る舞いしていた会社の双方に、政界を巻き込み厳しい批判が起きた。

クワーテング・民間企業相は「合理的かつ妥当な改革パッケージで英国の監査システムを近代化していく必要がある」と強調した。企業統治体制への信頼回復や透明性の向上も、投資の呼び込みに不可欠だと指摘した。実効性を持たせるため、監督当局のFRCは「監査・財務報告・企業統治監督機構(ARGA)」に改組して法的権限を強くする。

監査業界は改革案を前向きに受け止めている。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)英法人のケビン・エリス会長は「財務報告や規制枠組みへの信頼を高めるための重要な一歩だ」と述べ、監査の質を向上させるための対応を進める考えを示した。

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