英、対EU交渉官が入閣へ 完全離脱後の課題に対応

【ロンドン=中島裕介】英国のジョンソン首相は2020年末まで欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)などの交渉で首席交渉官を務めたデービッド・フロスト氏を内閣府担当相として入閣させることを決めた。3月1日に就任する。英EU間での物流の混乱や北アイルランドの国境問題の再燃など、20年末のEUからの完全離脱後に起きている問題について、EUとの協議にあたる。
英国で選挙で選ばれる下院議員以外が入閣するのは珍しい。フロスト氏はもともと外交官で、20年の夏に選挙で選ばれない上院議員となった。だがEUとのFTA交渉にあたっていたため、議員活動の実績はほぼない。英紙フィナンシャル・タイムズはフロスト氏の起用は、「20年末に英EUで結んだFTAに、対処すべき懸念が多いことを示す」と分析している。
21年1月に暫定発効した英EU間のFTAでは関税ゼロの貿易は維持したものの、新たに輸出申告や食品検査など通関手続きが発生した。このため魚介類が今まで通りの鮮度でEUに輸出できないなど、農業や水産事業者がトラブルに直面している。事実上EUの単一市場に残ることになった英領北アイルランドでも物流の混乱が起きている。
英政府はフロスト氏の起用によりこうした問題を巡るEUとの協議を加速させたい考えだ。フロスト氏は英EUの協定の実施状況の監視などを担う「パートナーシップ評議会」の英側の議長も務める見通しだ。