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チュニジア新憲法案、大統領の権限強化へ25日国民投票

【カイロ=久門武史】北アフリカのチュニジアで、大統領の権限を強化する新憲法案の賛否を問う国民投票が25日に迫った。最低投票率の定めはなく、承認される公算が大きい。2011年の「アラブの春」で唯一の成功例とされた同国の民主化の後退に一段と懸念が高まっている。

サイード大統領が6月30日に公表した新憲法案では、大統領が閣僚の任免権や議会の解散権、優先的な法案提出権を握る。任期は5年で2期までとしたが、国家への「急迫の危険」を理由に延長でき、解任に関する規定はなくなった。議会や司法の権限を弱める内容だが、サイード氏は「革命の進路を正すため、賛成票を投じてほしい」と強調した。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは「大統領自ら指名した委員会が密室で4週間で起草したものだ」と手続きにも疑問を呈した。11年に長期独裁政権が倒れた「ジャスミン革命」後、14年に制定した現行憲法は、法曹や政党も交え2年をかけた透明な起草手続きだったと訴えた。今回は新憲法案の発表後、当の起草委員会のベライド委員長が「我々が大統領に提出した草案と無関係だ」と暴露し、いっそう疑念を呼んだ。

イスラム政党アンナハダは「抑圧的な権威主義体制につながる」と訴え、国民投票のボイコットを呼び掛けた。人権団体など非政府組織(NGO)もボイコットを唱えている。大きな影響力を持つチュニジア労働総同盟(UGTT)は、新憲法案が民主主義を脅かす可能性を指摘しつつ、組合員の投票は認めると報じられた。反対票を結集する動きは盛り上がっていない。

サイード氏は21年7月、新型コロナウイルスの感染拡大や経済の悪化による反政府デモを受け、首相を解任し議会を停止した。議会の機能不全に嫌気がさしていた有権者は歓迎した。同氏はその後も権限掌握を進め、今年2月に裁判官の人事権を持つ司法最高評議会を一方的に解散した。裁判官らがデモで抗議したが、反大統領の動きは今のところ広がりを欠く。

チュニジアは「アラブの春」の先駆けとなり、14年制定の憲法で大統領と首相に権力を分散し、民主的な選挙を重ねてきた。ただ経済の低迷が続き、打開できない議会政治に有権者は失望感を募らせた。新憲法案の承認で、なし崩し的に進んだ大統領の権限掌握が固定する恐れがある。

ほかにも、長期独裁政権が倒れたアラブの国々では、既に民主化の挫折が相次いでいる。リビアは11年に約42年続いたカダフィ政権が崩壊した後、国が東西に分裂して内戦に陥った。ムバラク政権を退陣に追い込んだエジプトは、軍出身のシシ大統領による強権的な統治に回帰している。

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