プーチン氏、ベラルーシ3年ぶり訪問 参戦実現へ圧力か - 日本経済新聞
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プーチン氏、ベラルーシ3年ぶり訪問 参戦実現へ圧力か

(更新)

【ウィーン=田中孝幸】ロシアのプーチン大統領は19日、ベラルーシの首都ミンスクで同国のルカシェンコ大統領と会談する。泥沼化しているウクライナ侵攻の局面打開に向け、ベラルーシから一段の軍事協力を引き出す狙いだ。ウクライナや西側諸国はロシアの圧力でベラルーシが参戦するシナリオを警戒する。

タス通信によると、プーチン氏は19日午後にミンスクに到着した。プーチン氏がベラルーシを訪れるのは2019年以来、およそ3年ぶり。

ベラルーシ国営ベルタ通信によると、ルカシェンコ氏は「安全保障や経済問題が議題になる」と述べた。ウクライナメディアは17日、ロシアがベラルーシの軍需産業への支配を強めようとしていると伝えた。

ベラルーシはロシアの同盟国だが、ルカシェンコ政権は欧米とのバランス外交を続けてきた。20年8月の大統領選後、選挙不正を訴える抗議デモを弾圧したことで欧米との関係を悪化させ、ロシアへの依存を深めた。

ベラルーシとロシアは21年11月、金融政策など28項目で経済統合を進める計画を承認した。2月に始まったウクライナ侵攻でも、ベラルーシは自国に駐留するロシア軍がウクライナ北部に攻め込むのを容認し、ロシアに一定の貢献をしてきた。

ただ、ベラルーシ軍は参戦していない。自国軍に多くの犠牲が出れば政権基盤を揺るがしかねないからだ。ルカシェンコ氏は小出しにカードを切った。10月にはロシアとの「合同部隊」の設置を発表、動員準備に着手したものの、参戦への意思は曖昧にしたままだ。

欧州の情報機関はロシアがベラルーシから数万の兵員を補充し、北部からウクライナの首都キーウ(キエフ)周辺に再侵攻する可能性があるとみる。欧州から東部戦線に向かう支援ルートを分断するシナリオだ。最も近い所でベラルーシ国境からキーウまでは約100キロメートルしか離れていない。

ウクライナとベラルーシの国境は約1000キロメートルに及び、大軍の侵入を防ぐのは難しい。キーウ再侵攻が成功しなくても、ウクライナは戦闘が続く東部や南部に加え、北部にも兵力を割かざるをえなくなる。

ウクライナ兵が分散すれば、ロシアが重視する東部4州の戦況が一気にロシア優位に傾く可能性もある。このシナリオはベラルーシが早期に参戦して兵員を出すことが前提になるが、同国は対応を決めてこなかった。

ロシア側はいらだちを募らせている可能性がある。ルカシェンコ氏のもとで12年から外相を務めていたマケイ氏が11月に急死した。同氏は「ロシアの影響下にない数少ない人物の一人だった」(ウクライナのゲラシチェンコ内相顧問)とされ、急死へのロシアの関与説もささやかれる。

首脳会談に先立ち、ロシアのショイグ国防相は3日にミンスクを訪れ、ルカシェンコ氏やフレニン国防相と会談。地域の安全保障に関する軍事部門の国家間協定を修正することで基本合意した。ベラルーシ国防省は13日、部隊移動や渡河訓練など同国軍の戦闘態勢をチェックする緊急の軍事演習を始めたと発表した。

ウクライナはベラルーシの参戦を念頭に準備を進めている。同国からキーウへの攻撃は23年2月ごろにあると想定し、ベラルーシとの国境地帯で防御壁を建てたり地雷を埋めたりしている。

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