ロシア戦争犯罪、追及先例に マレーシア機撃墜で終身刑

【ブリュッセル=竹内康雄】2014年にウクライナ上空でマレーシア航空機が撃墜され、乗客ら298人が死亡した事件で、オランダの裁判所は17日、殺人罪に問われた元ロシア大佐ら3人に終身刑を言い渡した。22年2月以降のウクライナ侵攻などで起きたロシアの戦争犯罪を、追及する先例になる可能性がある。
事件は14年7月、オランダのアムステルダムからマレーシアのクアラルンプールに向かうマレーシア航空機「MH17」がウクライナ東部で撃墜されて起きた。同地は親ロ派勢力が一方的に独立を宣言した場所だ。
航空機にはオランダ人が193人と最も多く乗っていたことから、オランダが国際合同捜査を主導した。マレーシア人やオーストラリア人も多く乗っていた。
判決を受けたのは、親ロ派支配地域「ドネツク人民共和国」国防相を自称した元ロシア連邦保安局(FSB)大佐イーゴリ・ギルキン、元ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)幹部セルゲイ・ドゥビンスキー、元同軍特殊部隊員オレク・プラトフ、ウクライナ人の分離独立派レオニード・ハルチェンコの4被告。
裁判所は撃墜は親ロ派勢力の発射した地対空ミサイルによって起きた「十分な証拠がある」と判断し、プラトフ被告以外に有罪判決を出した。プラトフ被告は証拠不十分で無罪とした。
AFP通信によると、ロシア外務省はこれを政治的な動機に基づく「スキャンダラスな」判断だと批判した。一方でウクライナのゼレンスキー大統領は判決を評価した上で「黒幕の責任を問うことも重要だ」とし、ロシアのプーチン大統領らを追及すべきだと示唆した。
22年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、市民の虐殺など多くの戦争犯罪とみられる事件が相次いでいる。今回の判決は、その戦争犯罪の追及の先例になる可能性がある。オランダにある国際刑事裁判所(ICC)が捜査に乗り出し、欧州各国や米国などの協力を得て情報収集を進めている。
もっとも、今回の裁判の対象になった4人はロシアにいるとみられる。ロシアが対象者を引き渡し、被告が罪に服する可能性は低い。裁判所は1600万ユーロ(約23億円)の損害賠償を認めたが、支払われるかも不透明だ。多くの記録を集めて真相を解明するという点では有効だが、戦争犯罪を問う難しさも示している。

2022年2月、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
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