英政府、性別変更簡素化阻止へ スコットランドは反発

【ロンドン=中島裕介】英政府のジャック・スコットランド担当相は17日、スコットランドの地方議会が昨年末に可決した性別変更の手続きを簡単にする法案の施行を阻止すると発表した。ジャック氏は国内で地域によって性別変更の手続きが異なることで、「著しい複雑さ」をもたらすと指摘した。悪意のある男性の性別変更が女性専用の空間やサービスを危険にさらすとの懸念も示した。
スコットランドの地方政府は英国からの分離独立を目指すスコットランド民族党(SNP)が政権を握っており、独立感情が高まる可能性もある。SNPのスタージョン党首は法案の施行を目指して、法廷闘争も辞さない意向を表明した。
英政府は地方議会の立法権について定めたスコットランド法35条を行使して、法律の正式な成立に必要な国王の裁可を阻止する。英政府は初めてこの権限を使う。ジャック氏は17日の議会への説明で、法案が与える様々な影響を分析したと説明し、「軽々しく阻止を決めたのではない」と訴えた。
法案では法的な性別変更に必要な認定証明書を申請できる年齢を18歳から16歳に引き下げた。また、申請の際に自認する性と出生時の性が異なるトランスジェンダーであることを医学的に診断した証明書も必要なくなり、自己申告を可能にした。英BBCによると、欧州の複数の国で自己申告による性別変更ができる。
トランスジェンダーの支援活動家らは画期的な法案と評価していた。反対派からは女性の安全が保てないとの意見が強かった。本能的に性別変更を嫌う保守層も法案に反対している。
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