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エチオピア北部戦闘 ノーベル平和賞のアビー首相、強硬

ティグレ州での戦闘を逃れてきたエチオピア難民(15日、スーダンの難民キャンプ)

東アフリカのエチオピアで11月、アビー政権と北部の少数民族の対立が武力衝突に発展した。難民は5万人を超え、混乱は隣国に波及したのに加え、多民族国家エチオピアに深刻な分断をもたらした。かつてノーベル平和賞を受賞したアビー首相の強硬姿勢が際だち、火種はなおくすぶっている。

「最後の一線を越えた」。11月4日、アビー氏は北部ティグレ州の与党ティグレ人民解放戦線(TPLF)に襲撃されたとして、軍に反撃を命じた。空爆や地上部隊の投入で28日に州都制圧を宣言した。戦闘で数千人が死亡したとの見方がある。

衝突は2つの点で国際社会の懸念を呼んだ。

まず大陸東端の「アフリカの角」と呼ばれる不安定な地域の緊張を高めた。TPLFは隣国エリトリアにロケット弾を打ち込んだ。エリトリア軍が越境しアビー政権に加勢したという米政府の見方をTPLFも共有しているようだ。

隣国スーダンに逃れたエチオピア難民は、国連によると5万人を上回った。スーダンも経済不振の低所得国だ。難民キャンプでは食料や医療物資の不足が伝えられた。

もう一つは、80以上の民族が共存するエチオピアの亀裂を深めた点だ。衝突のさなか、ティグレ州マイカドラで市民600人以上が殺害されたとエチオピア人権委員会は発表した。ティグレ人が対立するアムハラ人らを特定し襲ったという。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「戦争犯罪」と非難した。

人口1億1千万の同国でティグレ人は少数派だが、2018年に最多数民族オロモ出身のアビー氏が首相に就くまで30年近く政権の中枢を占めた。アビー政権下で力をそがれたTPLFは不満を強め、今年9月に州内で独自の選挙を強行し、対立が決定的になった。

「政権側が疎外感を抱く人々と幅広い政治対話をしない限り、ティグレは支配に服しないだろう」と米アトランティック・カウンシルのキャメロン・ハドソン氏は指摘する。アフリカは多民族国家ばかりだ。アビー氏がどう事態を収拾するかに関心は強い。

同州では通信が遮断され、戦禍の詳細は不明だ。アビー氏は情報統制のかたわら「内政問題」とアフリカ連合などの仲介を拒み続けた。ノーベル賞委員会は「深刻な懸念」を示す異例の声明を出した。エリトリアとの国境紛争を終結させたアビー氏に19年、平和賞を贈っていた。時期尚早だったとの声が上がった。

エチオピアは繊維産業などを柱に2ケタ成長を続けたが、政情不安は悲願の中所得国への脱皮を遅らせかねない。スウェーデンのアパレル大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)に供給する州内の縫製工場が操業を止めたと伝えられた。TPLFは、なお抵抗を続ける構えを示している。(カイロ=久門武史)

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