戦況長期化、ロシアの国民生活にも負担 万引きも増加

ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、ロシアの国民生活への負担が一段と増している。経済制裁などによる物価高基調が続き、価格が上昇する医薬品を急ぎ買い求める動きや万引きも増加している。ロシア国内の動画大手サービスがハッキングで利用が一時停止する事態も起きており、混乱の度合いが高まっている。
侵攻が発生した2022年2月以降にロシア国内で万引きが増加している。ロシアメディアのRBKによると、IT企業などによる分析結果として、2~4月の3カ月間の小売店での万引きが前年同期比で18%増加した。
特に食料品店では盗難品の入ったカゴを含めて盗まれることが多いという。盗難商品の内訳は、菓子類が19%ともっとも高く、ソーセージ(16%)、アルコール類(14%)などとなっている。
盗んだ商品の平均額は1500ルーブル(約3000円)で同25%増だった。ロシアで普及が進むセルフレジコーナーでの万引きが増えているという。食料品販売店はビデオ監視システムを導入するなどの対策に取り組んでいるが、万引きの十分な抑制にはつながっていないようだ。
こうした動きが増える背景には、経済制裁などによる国内経済の停滞や物価上昇がある。ロシア連邦統計局が13日に公表した4月の消費者物価指数は前年同月比17.83%上昇した。ロイター通信によると、2002年1月以来の高水準だ。西側諸国による経済制裁や、通貨ルーブルの大幅な変動が主な要因とみられる。
内訳を見ると、食品が約20%上昇し、10%強上がったサービス価格に比べて上昇が目立った。侵攻以降、砂糖や野菜、肉類などの価格上昇が顕著で、店舗によっては品切れとなったり、砂糖や塩の購入制限を設ける小売店も出てきていた。
生活に必要な医薬品も不足傾向にあり、価格も上がっている。ロシア紙ベドモスチによると、特に侵攻後の2月末から3月にかけては薬局の週間売上高がほぼ倍増するなど需要が大きく増加。医薬品の平均価格も4月上旬にかけて少なくとも8%以上上昇し、鎮痛剤が約2割値上がりするなど常備薬の価格上昇が目立った。
足元の需要はやや落ち着いているもようだが、今後は海外から輸入する医薬品の在庫が減少し、中長期的に不足感が強まる可能性が懸念される。米イーライ・リリーや米アッヴィは生命の維持に関わらない一部医薬品の供給停止を決め、仏サノフィなども投資を停止すると発表した。日本の製薬会社の一部でも検査に使う試薬などの供給を見合わせる企業が出始めた。医薬品は人道の観点から経済制裁の対象外だが、物流や代金の決済などに支障が出ている。
日常的に触れるメディアにも影響が出ている。ロイター通信によると、5月にはロシア国内で知名度の高い動画サイト「RUTUBE(ルーチューブ)」がハッキングの影響で、9日の対独戦勝記念日から3日間にわたって一時的に閲覧ができなくなった。
ウクライナ侵攻を受けて、動画配信の米ネットフリックスなどロシア国内でのサービスをやめた企業も多い。SNS(交流サイト)はフェイスブックやツイッターがロシア当局によってアクセスを制限されており、国民が利用できるネットメディアの選択肢は狭まっている。

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