クレディ・スイス会長が辞任 コロナ規制違反で引責

【ロンドン=篠崎健太】スイス金融大手クレディ・スイス・グループは17日、アントニオ・オルタオソリオ会長が辞任したと発表した。新型コロナウイルスの感染を防ぐ行動規制に違反した疑いが浮上して内部調査を受け、混乱を招いた責任を取った。2021年4月に就任したばかりで、相次ぐ不祥事を受けた組織改革への手腕発揮が期待されていたが、立て直しの旗振り役が自らの不祥事で去る事態に見舞われた。
オルタオソリオ氏は「私の個人的な行動が会社に困難を招き、代表する能力を社内外で損なったことを遺憾に思う」との声明を出した。後任の会長には元UBSグループ幹部のアクセル・レーマン取締役が就いた。21年にクレディ・スイスに移籍し、リスク委員会のトップを務めてきた。
ロイター通信によるとオルタオソリオ氏は21年7月に英国を訪れた際、ロンドンでテニスのウィンブルドン選手権を観戦していた。当時の英国はスイスからの渡航者に原則10日間の自己隔離を義務づけていたが、観戦したのはその期間中だったという。他にスイスのコロナ規制に違反した疑いも浮上し、取締役会が調査していた。
オルタオソリオ氏は21年4月、英銀大手ロイズ・バンキング・グループの最高経営責任者(CEO)からクレディ・スイス会長へ転じた。米アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引での巨額損失や、英金融会社グリーンシル・キャピタルと組んで運用していたファンドの凍結など問題が相次いだことを受け、組織改革を主導することが期待されていた。経営刷新の象徴だった人物が自身の倫理違反で早々に退く事態になった。