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仏、EU貿易交渉に「待った」 大統領選控え地方に配慮 

【パリ=白石透冴】フランスが欧州連合(EU)の進める自由貿易協定(FTA)の交渉に相次いで「待った」をかけている。相手はニュージーランド(NZ)やオーストラリアなど農畜産業が盛んな国が多い。2022年4月の大統領選をにらみ、マクロン大統領が支持率で劣勢になっている過疎地域の有権者に配慮しているとみられる。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、フランスはEUがNZと進めるFTA交渉を仏大統領選まではまとめないようEU交渉官に働きかけている。EUは年内の合意を目指したが、ずれ込む可能性が出てきた。

NZとの交渉は18年に始まり、現在の貿易額(20年に約8400億円)は関税引き下げで機械、化学、食品、運輸などを中心に4割増えると見込まれる。

仏政府は農家の反発を懸念する。「不当な競争をやめろ」。畜産農家などでつくる仏労働組合「コルディナシオン・ルラル」は20年、ニュージーランド産のラム肉輸入を批判する声明を出した。NZの畜産農家は1戸あたり平均3千頭もの家畜を飼い、肉の価格は仏産の半分程度などと主張した。NZ産羊肉はフランスの輸入元の1割強を占めるが、貿易協定で輸入量が増えれば仏畜産農家には打撃となりかねない。

フランスは同じく年内決着を目指したEU・チリの貿易交渉の先送りも主張している。既存のFTAの内容を充実させる交渉だが、フランスはチリ産鶏肉の輸入拡大を懸念しているという。現在は国内消費の6割が仏産だ。

フランスは18年に始まったEUと豪州のFTA交渉も延期を主張する。表向きの原因は豪州が次世代潜水艦導入の協力国をフランスではなく米英にすると発表したことだ。仏政府はまず信頼を取り戻すべきだとしている。リステール貿易・誘致担当相は「豪州の環境対策は不十分だ」と気候変動対策の強化を交渉再開の条件とする考えも示す。

ただ、本音は畜産業への打撃への懸念だとの指摘がある。仏調査会社ABCISは、20年に仏農業省に提出した報告書で、豪州とNZとのFTAについて「欧州市場にとって、機会よりも危険の方が大きい」と結論づけた。両国とも食肉や乳製品で高い競争力を持つ一方で、両国の国内市場は小さく、欧州側の恩恵は限定的だとした。

フランスは国土の半分が農地で、EUの農産物の約2割を生産するEU最大の農業国だ。農業は80万人以上を雇用し食文化を支える基幹産業と位置づけられている。マクロン氏は大統領選を控え、農家の票を失う恐れがある政策決定に慎重になっている。

マクロン氏は農業が盛んな過疎地域での支持が低迷している。仏調査会社Ifopの10月の調査によると、マクロン氏の支持率は全土では24%と首位だが、過疎地域にかぎれば20%で極右国民連合のルペン党首を下回った。ルペン氏は自由貿易を「野蛮なグローバル化」と呼び、厳しく批判している。

EU主要国のフランスが経済で内向き姿勢を強めれば、EU内の不協和音を生みかねない。EU本部にはフランスの保護主義的な姿勢を疑問視する声があるとされる。フランスは22年1~6月にEU議長国を務め、加盟国の意見をまとめる立場だけに「大統領選まで先延ばし」という戦略でマクロン氏の求心力が逆に下がる恐れもある。

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