プーチン氏「対抗措置」 北欧2国にNATO軍事施設なら

ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」は16日、モスクワで首脳会議を開催した。出席したプーチン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)へのフィンランドとスウェーデンの加盟申請について「直接的な脅威にはならない」と述べたうえで、両国に軍事施設が設置されれば対抗措置を取る可能性を示唆した。
首脳会議では安全保障などに関する加盟6カ国の結束を確認し、共同声明を採択した。プーチン氏は「(CSTOの)影響力が高まることを期待している」と話した。ベラルーシのルカシェンコ大統領は「欧米は旧ソ連地域の不安定化を狙っている」と懸念を示した。
CSTOは1992年にロシアなど旧ソ連構成国の一部が条約に調印、2002年に機構が発足した。現在はロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国が加盟する。首脳会議は調印から30年の節目となる。
ロシアはウクライナ東部の掌握を目指すが、ウクライナ軍の激しい抵抗で膠着状態に陥っている。ウクライナ軍は15日、ロシア側が約2500人の予備役を投入する準備をしていると発表した。
米シンクタンクの戦争研究所は「(予備役は)一部で最大20%を損耗したとされるロシア軍部隊を補充するのに十分とはいえない」と分析した。ロシア軍が東部ルガンスク州の制圧を優先するため「(東部で)ウクライナ軍部隊を大規模包囲する目標を断念したようだ」との見方を示した。
旧ソ連諸国でもロシアと距離を置く動きがある。ルカシェンコ氏は5月上旬のインタビューで侵攻が「(想定より)長引いている」などと指摘した。英国防省は16日の戦況分析で「ベラルーシ軍は今日まで紛争に直接関与していない」と指摘、軍内部の不満や西側の制裁などを避ける思惑があるとの見方を示した。
同機構は加盟国の国家安全保障と領土保全を目的としている。22年1月にカザフスタンで燃料高をきっかけに発生した抗議デモではCSTOの部隊派遣が国際的な注目を集めた。デモ隊の一部が暴徒化し、カザフスタンのトカエフ大統領はCSTOに治安維持に関する支援を要請。カザフスタンを除くCSTO加盟の5カ国は同月、ロシア軍を中心とする治安維持部隊を派遣した。
カザフスタンなど中央アジア諸国は日本などとの連携も模索している。林芳正外相は4月下旬にカザフスタンなどを訪問して国際社会での連携を促した。カザフスタンのトレウベルディ副首相兼外相はロシアに外交的努力をする用意があると応じた。
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ウクライナ侵攻を決めたプーチン氏。米情報機関による分析、専門家・編集委員らによる解説記事をまとめています。最新情報も随時公開していきます。