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サウジ、長引く油価低迷に備え 21年緊縮予算

21年予算を発表するサウジのサルマン国王(15日、サウジ国営通信提供)=ロイター

【カイロ=久門武史】サウジアラビアが石油価格低迷の長期化への備えを迫られている。新型コロナウイルスの感染再拡大が燃料消費を冷やし、ワクチンへの期待はあっても需要回復が読みにくい。15日発表した2021年予算で歳出を7%削る緊縮策を強いられ、なお財政赤字が続く。

「世界経済の回復ペースは不確かで、石油市場を予見する難しさは増している」。サウジ財務省はこう指摘した。足元の原油相場は国際指標の北海ブレント原油先物が1バレル50ドルを超え、3月以来の高値圏にある。新型コロナのワクチン接種で経済が正常化に向かうとの思惑から持ち直してきた。しかし世界最大の原油輸出国サウジの予算は、先行きを楽観していないことを示した。

サルマン国王が15日発表した21年予算は、歳出を9900億リヤル(約27兆4千億円)と20年の実績見込み比7%減とした。歳入は1割増の8490億リヤルと、新型コロナで石油需要が急減した今年よりは改善するとみるが流行前の19年と比べ1割近く少ない。

財政赤字は1410億リヤルと国内総生産(GDP)比4.9%になる。同12%に膨らんだ今年よりは縮小する想定だ。今回見通しを示した23年まで赤字財政が続くとした。

野村アセット・マネジメント中東のタレク・ファドララ氏は「支出削減は、財政規律を保ちドルペッグを維持する決意の表れだ」とみる。MENAアドバイザーズのロリ・ファイフ氏は「サウジは原油輸出価格を1バレル48ドルと想定している」と指摘した。国際通貨基金(IMF)によると、サウジの21年の財政収支を均衡させる価格は67.9ドルだ。現状の50ドル台が続けば赤字は膨らむ。

国際エネルギー機関(IEA)は15日公表の月報で、新型コロナワクチンへの期待感を「ユーフォリア(陶酔)」と表現し、石油需要に効果が出てくるのに「数カ月かかる」との見方を示した。航空燃料の需要回復が遅れるとし、21年の世界の石油需要予測を日量9691万バレルに下方修正した。19年の実績を3%下回る水準だ。

サウジが主導する石油輸出国機構(OPEC)にロシアなど非加盟の主要産油国を加えた「OPECプラス」は3日、来年1月から協調減産の幅を縮小すると決めた。ただ毎月協議して見直すとし、産油国の間でも確たる見通しを共有できていないことを浮き彫りにした。

サウジは歳出カットの一方、歳入増へ増税に踏み切った。今年7月、日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)を一挙に3倍の15%に引き上げた。公務員手当の凍結なども打ち出している。

実力者ムハンマド皇太子が打ち出した脱石油の改革は、誤算続きだ。目玉の国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)はようやく19年に国内取引所で実現したが、当初目標の海外上場はめどが立たない。石油以外に産業を多角化するための資金調達に狂いが生じている。

サウジは若年人口が膨らんでおり、雇用づくりが緊急の課題となる。大盤振る舞いの支出を削る一方で納税者の負担を増やす緊縮策は、国民が不満を募らせるリスクと背中合わせだ。格付け大手フィッチ・レーティングスは「痛みを伴う財政調整は21年に社会的、政治的な反動をうむ」と指摘している。

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