スイス中銀が15年ぶり利上げ 政策金利マイナス0.25%に

【ベルリン=南毅郎】スイス国立銀行(中央銀行)は16日、政策金利を従来のマイナス0.75%からマイナス0.25%に引き上げると決めた。利上げはおよそ15年ぶり。公表した金融政策報告書では「さらなる利上げが必要になることは否定できない」として追加利上げを示唆した。スイスでも消費者物価の伸び率は中銀目標を超え続けており、インフレ抑制にかじを切る。世界的な利上げの波が一段と広がってきた。
スイス中銀の発表を受けて、日経平均先物は一時、16日終値に比べ800円下げる場面があった。
政策金利の引き上げは17日から適用する。スイス中銀の政策金利は世界最低の水準でマイナス金利政策を導入する同中銀の判断に注目が集まっていた。
スイスの5月の消費者物価の伸び率は前年同月比で2.9%と、およそ14年ぶりの高水準になった。中銀が物価安定の目標とする2%未満を4カ月連続で上回っている。新型コロナウイルス禍の2020年には一時マイナス圏で推移していたものの、足元では一転してインフレ加速が鮮明だ。
16日公表した新たな物価見通しでは22年のインフレ率を2.8%、23年を1.9%とした。金融政策報告書では「きょうの利上げがなければインフレ見通しはさらに高まっていただろう」と指摘した。
大幅利上げを受けて、スイスフラン相場は対ユーロで一時1ユーロ=1.01フラン台と前日の1.04フラン前後から上昇した。3月には一時1.00フラン前後とおよそ7年ぶりの高値を付けていた。
市場では政策金利の据え置きを見込む声が大勢だったものの、一部ではインフレ加速を背景に利上げ観測も浮上していた。今回の報告書では、従来盛り込んでいた「フランは高く評価されている」との文言を削除。利上げは通貨高の誘因になるものの、インフレ抑制を優先させる必要があると判断したもようだ。
マイナス金利政策を導入する主要中銀は、スイス以外では欧州中央銀行(ECB)や日銀、デンマークにとどまっている。スウェーデンは19年12月にマイナス金利政策からの脱却を決め、22年5月には政策金利をプラス0.25%まで引き上げた。ECBは9月にもマイナス金利政策を終える見通しだ。
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