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欧州で広がるワクチン中断 副作用懸念、早期普及に冷水

ドイツやフランスなどはアストラゼネカのワクチン接種を一時的に見合わせる=ロイター

【ロンドン=佐竹実】欧州で英アストラゼネカ製のワクチン接種を一時的に見合わせる動きが広がっている。血栓など副作用の疑いがあるためで、15日にはドイツやフランスなど主要国が一斉に中断を表明した。世界保健機関(WHO)はワクチンと血栓に因果関係は認められないと接種継続を促している。欧州医薬品庁(EMA)が18日にも示す判断が焦点となる。

「ワクチンへの信頼を高めるため、専門家に(副作用の)事例を調べる時間を与える必要がある」。ドイツのシュパーン保健相は15日、中断があくまで一時的な予防的措置である点を強調した。これまでもノルウェーやアイスランドなど一部の国がアストラゼネカ製の接種停止を打ち出していたが、15日にはフランスやイタリア、スペインなど欧州主要諸国に一気に広がった。

血栓の副作用の可能性をはじめに指摘したのは11日に接種中断を表明したデンマークだ。ワクチンは一般的に接種後に一定の割合で副作用がみられる。アストラゼネカによると、同社のワクチンを接種したEUと英国の1700万人のうち、肺塞栓の報告は22件、静脈の血栓症は15件(8日時点)だった。ワクチンを打たないで血栓が自然発生する割合を下回っているといい、14日には「安全性に問題はない」と接種中断の動きに反論した。

WHO「パニックになってはいけない」

15日にはWHOも同社製のワクチン接種について「現状では続けることを勧める」と表明した。主任科学者のソミヤ・スワミナサン氏が記者会見で「統計的に接種した人が血栓などの症状をみせる確率は、自然発生する確率より低い。パニックになってはいけない」などと語った。ただ接種を推奨する方針を変える可能性があるとも付け加えた。WHOの専門家は16日に会合を開き、同社ワクチンについて話し合う予定だ。

それでも各国が一斉に中断に動くのは、国民の間でワクチンへの不信感が募り接種を忌避する機運が広がるのを避けるためだ。

通常、ワクチンの開発は入念な臨床試験(治験)などに5~10年を要する。しかし新型コロナのワクチンは危機克服へパンデミック(世界的流行)から1年足らずで各国政府の承認や接種開始にこぎ着けた。データの積み重ねが一般のワクチンに比べ少ないなか、実際に接種する人数が増えるほど副作用の症例が増える側面もあり、人々の不安が増幅したり政府が安全性を簡単に認めづらかったりする。

EU当局、18日にも見解

今後の焦点の一つは、EUの医薬当局であるEMAが18日にも公表する予定のアストラゼネカ製ワクチンに対する見解だ。EMAは現時点で、アストラゼネカのワクチン接種の利益が副作用のリスクを上回るとしており、血栓とワクチンの因果関係について結論を出す。フランスのマクロン大統領は「EMAが継続を認めれば、なるべく早く接種を再開したい」と述べるなど、EMAの発表を経て中断は短期間で収束する可能性もある。

一方、EMAの見解が国民の不安や不信感の払拭につながらなければ、変異ウイルスが広がるなかでワクチンの早期普及や経済復旧の足かせになる恐れもある。

世界ではアストラゼネカ製以外でも、米ファイザーと独ビオンテックの共同開発ワクチンや米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製の接種が始まっている。いずれも増産投資のただ中で供給は十分とはいえず、主要ワクチンの一つであるアストラゼネカ製が使えなくなれば痛手は大きい。ワクチンを自国で囲い込む「ワクチン・ナショナリズム」や、中国やロシアが自国製ワクチンを材料に外交を優位に進める「ワクチン外交」の動きが一段と強まる懸念もある。

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