ウクライナ使用の軍用ドローン、トルコがアジア輸出視野

【ワルシャワ=木寺もも子】ウクライナ軍が使用するトルコ製の軍用無人機(ドローン)が注目を集めている。トルコはロシアとウクライナの間で微妙なバランスを保とうとする一方、ドローンはロシアの補給車両を爆撃するなど抗戦で重要な役割を果たしているもようだ。トルコ側は日本などアジアへの輸出拡大もうかがう。
雪道を行くロシア軍の車両に上空から照準を合わせると、大きな爆発が起きる――。ウクライナ軍の高官らがフェイスブックで続々と紹介する白黒の戦況映像で、ウクライナ軍が使用しているとされるのがトルコのドローン「バイラクタルTB2」だ。
詳細な戦果は不明だが、TB2はロシアの補給路を断っているなどとされ、ウクライナでは称賛の動きが広がる。首都キエフの動物園で生まれたキツネザルはバイラクタルと名付けられ、軍はインターネットにTB2をたたえる歌を投稿した。
製造企業はバイカル防衛で、トルコのエルドアン大統領の娘婿の一族が経営する。2019年ごろからウクライナ軍が導入しているとみられ、21年の首脳会談の際には20機の購入で合意した。関係者の発言を総合するとウクライナ軍は数十機を保有しているとみられる。
トルコの軍用ドローンは近年の紛争を通じ、評価を高めてきた。隣国のシリアでの作戦で使用したほか、20年にはリビア内戦やアゼルバイジャン軍が使用したナゴルノカラバフ紛争で戦局の決め手になったとみられている。メーカーは民間のバイカル社のほか、政府系のトルコ航空宇宙産業(TAI)などがある。
米国やイスラエル、中国などのドローン先進国と比べると後発だが、価格が比較的安価なうえ「実戦を経ることで機能を急速に高めた」(トルコのシンクタンクEDAMのジャン・カサポール氏)。ロシアの侵攻に対し、戦局を劇的に動かすほどではないにせよ、一定の戦果を上げている可能性がある。
もっとも、これまでの紛争時と比べ、トルコの政府当局や主要メディアはウクライナでの戦果についてほとんど沈黙している。トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国ながらロシアとも関係が深く、刺激するのを恐れているためだ。
トルコはパイプラインを通じた天然ガスや小麦、観光客の送り出しでロシアに依存する。シリアでの停戦もロシア頼みで、停戦が崩壊すれば国内に多くの難民や過激派を招きかねない。エルドアン大統領は「ウクライナ、ロシアの両方が重要だ」と繰り返し述べ、対ロ制裁に反対する。
それでも、トルコは日本を含むアジアなどへの輸出拡大を狙う。TB2はトルクメニスタン、キルギスなど世界19カ国に輸出・成約済みで、さらに商談が舞い込んでいるという。
バイカルのハルク・バイラクタル最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に対し「中国は近隣国へのドローン売却に慎重だろうが、我々は良い条件を提示できる。反応も良い」などと自信を示した。「次世代機のTB3は日本の(護衛艦)『いずも』への搭載に適している」とも述べた。
TAIは21年11月、マレーシアに事務所を開設し、今年2~3月にはシンガポール、マレーシアで相次いで見本市にも参加している。

2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
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