アストラゼネカ製ワクチン、欧州主要国も接種見合わせ
【ロンドン=佐竹実】ドイツ、フランス、イタリア、スペイン政府は15日、英製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの接種を一時的に見合わせると発表した。接種後に血栓ができる事例が複数報告されたためだ。各国は18日にも出される欧州連合(EU)当局の見解を待って最終判断する見通しだ。同社は安全性に問題はないと反論しているほか、世界保健機関(WHO)も「現状では接種を続けることを勧める」と表明した。
ドイツではアストラゼネカ製ワクチン約160万回の接種後、血栓の可能性がある例が7件報告されたという。シュパーン保健相は「ワクチンの承認に影響するのかは欧州医薬品庁(EMA)が決める。あくまでも予防的措置だ」と強調した。
フランスのマクロン大統領は「EMAが継続を認めれば、なるべく早い次期に接種を再開したい」と語った。スペイン政府は15日、国内で少なくとも2週間、使用を停止することを決めた。ダリアス保健相によると、先週末に国内で血栓の例が1件確認された。
EMAは15日に出した声明で、「ワクチン接種者の血栓の症例数は一般に見られるより多くはないようだ」との見解を改めて表明した。18日に緊急会合を開き、対応を協議する方針を決めた。
アストラゼネカ製ワクチンは3月に入って接種後に血栓ができる例が確認されたとし、デンマークやノルウェー、アイスランドなどが予防的に接種を中断していた。
一方、アストラゼネカは14日、安全性に問題はないとの見解を発表した。これまでに接種を受けた英国やEUの1700万人以上のデータを確認した結果、「年齢や性別、ワクチンの製造時期などによって血栓症などのリスクが高まる根拠は見つかっていない」と説明している。
日本はアストラゼネカ製ワクチンを1億2000万回分(約6千万人分相当)調達する契約を結んでいる。菅義偉首相は16日、欧州各国が一時的に接種を見合わせていることに関し「まずは情報をしっかり集め、そのうえでの判断となる」と説明した。都内で記者団に語った。
アストラゼネカ製ワクチンは通常の冷蔵庫で保管できるうえ、比較的安価であることが特徴で、世界で幅広く接種が始まっている。欧州で血栓などの症状が報告され、延期していたタイ政府は16日、接種を開始したと発表した。保険省が、接種に大きなリスクはないと結論付けたとしている。
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