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ECB、22年3月に緊急買い取り制度終了 正常化へかじ

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【ベルリン=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は16日開いた理事会で、コロナ危機で導入した緊急買い取り制度による新規資産購入を2022年3月末で打ち切ると決めた。総額1兆8500億ユーロ(約240兆円)の同制度の終了で、22年4月以降の資産購入額は現在の半分以下に減る見込みだ。インフレへの懸念が高まるなか、金融政策の正常化に動き出した。

「段階的な資産購入ペースの縮小が許されると判断した」。ECBのラガルド総裁は理事会後の記者会見で、経済と物価が改善するなか、緩やかに緩和縮小を進めていく方針を示した。ただ物価を2%程度で安定させるためには「まだ金融緩和が必要だ」とも述べ、2022年の利上げは「とてもありそうにない」とした。

ECBは毎月、緊急買い取り制度で約700億ユーロ、従来型の量的緩和制度で約200億ユーロの資産を購入している。ECBは22年1~3月に緊急買い取り制度による購入量を現在より減額したうえで、3月末で新規購入を打ち切る。ただ、声明文では新型コロナウイルスの感染状況次第で「再開することもあり得る」とした。

購入額の急減で債券市場などが混乱しないように、激変緩和措置として、量的緩和制度による購入額を4~6月は月400億ユーロに引き上げることも決めた。7~9月は月300億ユーロ、10月以降は月200億ユーロとする。

主要政策金利(0%)と中銀預金金利(マイナス0.5%)は当面、現在の水準に据え置く方針だ。利上げは量的緩和の終了後になる見込みで、いつになるかはまだ見通せていない。早期利上げに向けて量的緩和終了を前倒しする米連邦準備理事会(FRB)と比べれば、緩和縮小のペースはかなり遅い。

最大のリスクはインフレだ。物価上昇率は11月、統計が遡れる1997年1月以降で最も高い4.9%に高まり、ECBの目標(2%)を大きく上回る状況が続く。ECBは16日公表した新しい経済見通しで、消費者物価上昇率が22年に3.2%(9月時点は1.7%)、23年は1.8%(同1.5%)、24年は1.8%になるとの予測を示した。

特に22年は大幅な引き上げで、ラガルド総裁によると、同年のほとんどの期間で目標の2%を上回ることになるという。それでも23年以降に2%未満に下がるので、緩和が引き続き必要というのがラガルド氏の考えだ。ただ、インフレ期待が高まれば想定以上に物価が上がる可能性もあり、ECBは賃上げの状況などを注視していく構えだ。

成長率見通しは22年が4.2%、23年が2.9%、24年が1.6%とした。新型コロナウイルス感染の再拡大とオミクロン型の登場、サプライチェーン(供給網)の乱れなどへの懸念は強いが「しっかりした内需に支えられて経済の回復は続いていく」(ラガルド氏)との見方を示した。

経済の過熱感が強まる米国に比べれば、欧州はまだ需要不足の状態で、失業率も高止まりしている。足元の物価上昇に過剰反応せずに、経済の状況を見ながら慎重に緩和縮小を進めていくというのがECBの方針だ。

問題は、欧州の各国によって財政や経済の状況が異なることだ。政府債務の国内総生産(GDP)比はドイツの69%に対し、ギリシャは207%、イタリアは156%、ポルトガルは135%とかなり高い。金融緩和の手じまいを急ぎすぎれば、南欧の財政不安が高まりかねない。

財政が比較的健全なドイツなどの欧州北部の国々は、インフレへの警戒から緩和縮小を強く求めている。インフレが想定以上に長引き、金融政策が後手に回るリスクがあるためだ。今後の政策方針を巡って南北の溝がさらに深まる可能性もある。

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