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EU、中国関係を転換 台湾に積極関与 新戦略公表 

EUのボレル外交安全保障上級代表=ロイター

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)がこれまで経済重視で築いてきた中国関係の転換に踏み出す。東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などインド太平洋地域の国・地域と幅広い関係を構築し、中国一辺倒から脱却する。危機に強い柔軟な半導体供給網など経済面での実利と、民主主義陣営の勢力拡大を狙う。

EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は16日、「インド太平洋協力戦略」を公表し、同地域の日本や韓国、オーストラリアに加え、従来は希薄だったASEANやインドなどと経済や安全保障での関係強化を打ち出した。記者会見で「世界の中心は経済面でも地政学的にもインド太平洋に向かっている」とEUが同地域に積極関与すると表明した。

とりわけ目立つのが台湾の扱いだ。半導体の供給網を台湾などと協力して強化するほか、データ移転を巡る協議に入る可能性にも言及した。欧州議会はEUと台湾との投資協定を検討するよう求めており、戦略は台湾など貿易・投資協定を結んでいない国・地域との関係を強化する意向を示した。

台湾側もEUとの関係強化に動く。ロイター通信によると、台湾は10月、閣僚が率いるビジネスミッションを欧州の3カ国に派遣する。スロバキア、チェコ、リトアニアの3カ国で、いずれも台湾との距離を縮めている国々だ。チェコは20年に上院議長が台湾を訪れ、中国が反発するなど外交問題に発展した。

EUが中国と距離を取りつつあるのは2つの理由がある。1つは中国が、EUの重視する価値観を過度に軽視していることだ。人権や民主主義はEUにとって最も重要な価値観。少数民族ウイグル族の不当な扱いや、香港での民主派の取り締まりに目をつむったまま経済関係の拡大を続ければ、EUへの信頼が失われかねない。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は15日の演説で、「専制的な政権が(インド太平洋)地域で影響力を増そうとしている」として中国などを念頭にけん制した。

もう1つは新型コロナウイルス禍であらわになった中国への依存だ。コロナ禍が猛威を振るい始めた20年の春先、欧州ではマスクが不足し、部品の供給が滞った自動車工場は操業停止を余儀なくされた。ほかにも、電気自動車(EV)の電池生産に必要な原材料の加工が中国に偏重していることに改めて関心が集まり、EUの危機感は高まった。

中国依存を解消するためにEUは域内生産を増やすなど「戦略的自立」に踏み切る一方、中国だけでなくインド太平洋全域に視線を広げ、調達先の多様化を進める。半導体に強みを持つ台湾に加え、ASEAN、インドとの協力関係も深める。供給網の安全維持には、台湾海峡や南シナ海での航行の自由などが重要だとして安保面にも関与する姿勢を示した。

だが、EUには米国ほど中国に強硬になれない事情がある。20年のEUの最大の貿易相手は中国だ。最大の経済大国ドイツは中国との過度な関係悪化に慎重な上、フランス自動車大手ルノーが8月に吉利汽車との提携を発表するなど、EU企業にとって中国市場はなお魅力的で簡単には手放せない。

EUが重視する気候変動対策でも、世界最大の温暖化ガス排出国である中国の協力は欠かせない。欧州委のティメルマンス上級副委員長(気候変動担当)は14日、欧州議会で「もっと(環境対策に)野心的になるよう中国を説得している」と、中国との対話の重要性を訴えた。

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