ロシア大統領 北方領土も「割譲禁止」の対象示唆か

【モスクワ=石川陽平】ロシアのプーチン大統領が同国メディア幹部との会見で、「日本との関係を発展したいし、発展していくが、基本法(憲法)に反することは一切しない」と語ったことが14日、明らかになった。憲法の領土割譲禁止条項を念頭に、北方領土の日本への引き渡しに応じない姿勢を示唆した可能性がある。
タス通信などロシアのメディア各社が14日、プーチン氏とメディア幹部の10日の会見内容を伝えた。2020年7月の全国投票で決まった憲法改正では、領土の割譲を禁じる条項が盛り込まれた。日ロ間の懸案である北方領土問題も対象になるかどうかが注目されている。
領土割譲の禁止条項と関連して、プーチン氏は南クリール(北方領土のロシア名)の主権との文脈で日本との関係をどう進めるかは、ラブロフ外相に聞くようにとメディア幹部に助言した。境界線画定の問題について「ラブロフ氏が説明してくれる」と述べるにとどめた。
領土割譲の禁止条項には「隣国との国境画定作業は除く」とする例外規定がある。プーチン氏はこの例外規定が、北方領土の帰属を巡る日ロ交渉でも適用可能かどうかは明言を避けた形だ。ただ、プーチン氏もラブロフ外相も北方領土は「第2次世界大戦の結果、ロシア領になった」との強硬な姿勢を示してきた。
今年9月の下院選や改憲によりプーチン氏の5選出馬が可能になった24年の次期大統領を前に、政権にとっては保守派の反発が予想される領土問題での譲歩は難しくなっているのが現状だ。メドベージェフ安全保障会議副議長(前首相)は1日公開のタス通信などとのインタビューで、憲法の領土割譲禁止条項に関し「我々にロシア領土の主権の引き渡しについて交渉する権利はない」と述べていた。
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