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ロシア主導部隊、撤収開始 カザフスタンのデモ収束で

【モスクワ=石川陽平】中央アジアのカザフスタンに派遣されていたロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の平和維持部隊が13日、撤収を始めた。燃料価格の高騰をきっかけに年初から広がった大規模なカザフ政府への抗議デモが収束したと判断した。ロシアは部隊派遣で旧ソ連の中央アジア諸国への影響力を強めた。

撤収開始は現地メディアが伝えた。ロシアのショイグ国防相は13日、撤収完了が19日になると同国のプーチン大統領に報告した。

カザフの国家保安委員会は13日、南部の最大都市アルマトイなど一部地域を除き「反テロ作戦の終了」を発表した。同国大統領府によるとトカエフ大統領は12日、首都ヌルスルタンでCSTOのザシ事務局長と会談して平和維持部隊の撤収開始で一致した。そのうえで「(CSTOが)軍事・政治機構として価値があると証明した」と述べた。

カザフを除くCSTO加盟の5カ国は6日、トカエフ氏の要請を受け、治安維持部隊の派遣を決定した。規模はロシア軍を中心に約2500人で、戦略的な施設の警備など後方支援を担当したという。

CSTOは13日、オンライン形式で国防相会議を開き、撤収方法の詳細を協議する。

ロシアは、今回の平和維持部隊派遣で、CSTOが中央アジア地域の安定に貢献したと評価している。プーチン氏は10日に開いたオンライン形式でのCSTO首脳会議で「迅速に、断固として、効果的に行動する能力を示した」と強調した。

CSTOはソ連崩壊後の1992年に旧ソ連6カ国が集団安保条約に調印したのが始まりで、平和維持部隊の派遣は今回が初めてだった。欧州安定のため軍事行動をたびたび実施してきた北大西洋条約機構(NATO)に比べ、CSTOの実力や結束を疑問視する声もあった。ロシアは今回の部隊派遣を実績にして、中央アジア安定の「保証人」(ロシア紙)になったと誇示する構えだ。

一方、バイデン米政権はCSTOの部隊派遣について「(カザフによる)要請の性質や、正当な招請だったかどうかは疑問だ」と指摘していた。中央アジアは中国、ロシア、インド、中東に囲まれ、天然資源が豊富で、戦略的に重要な地理だ。ここでロシアが影響力を強める事態を欧米諸国は懸念する。

カザフで市民らの抗議デモが広がった主因は、貧富の差の拡大など強権体制の弊害だ。ソ連崩壊前からカザフを統治したナザルバエフ初代大統領が2019年の退任後も院政を敷き、国民が不満を強めた。ロシアなどほかのCSTO加盟国も同じような強権体制の国が多いため、混乱波及を恐れ、迅速に平和維持部隊を派遣した側面がある。

CSTO加盟国は過激なデモを拡大させたのは、アフガニスタンや中東などから流入した「外国からのテロリスト」だと決めつけ、平和維持部隊の派遣を正当化する。抗議デモの背景には、地域間や支配層の利権争いなどが存在するとも指摘されている。

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