排出量取引価格、欧州で最高値 14年ぶり更新

【ロンドン=篠崎健太】欧州で温暖化ガスの排出量取引価格が上昇している。11日のロンドン市場では先物が1トン31ユーロ台まで上げ、取引が始まった2005年以降の最高値を14年8カ月ぶりに更新した。欧州連合(EU)が同日、30年までの新たな温暖化ガス削減目標で合意したことが材料視された。気候変動対策の強化が相次ぐなかで排出枠の希少性は増している。
国際指標の一つであるICEフューチャーズ・ヨーロッパ上場の先物は、期近の20年12月物が一時前日比1%強高い31.3ユーロまで上昇した。06年4月につけていた従来の最高値(31.0ユーロ)を上回った。11月初めの直近安値(22.79ユーロ)からの上昇率は3割強に達した。

堅調な背景には世界的な削減目標や規制の強化がある。EUは10~11日の首脳会議で、温暖化ガス排出量を30年までに1990年比55%減らすことで合意した。従来の目標は40%減で、50年実質ゼロの目標達成に向けてハードルを高めた。英政府も4日、排出量の目標を「30年までに90年比で少なくとも68%減」と、従来の53%減から引き上げた。
仏BNPパリバ・アセットマネジメントのサステナビリティー調査グローバルヘッド、マーク・ルイス氏は「EUによる野心的目標の合意は、次の取引期間である21~30年に(排出枠の)需給が急激に引き締まることを示唆する」と話す。取引価格の上昇は排出量の多い企業のコスト増につながる。投資家のESG(環境・社会・企業統治)重視の流れもあり、削減圧力はさらに強まりそうだ。
排出量取引は決められた上限を超えた企業が、余裕のある企業から「排出できる権利」を買って穴埋めする仕組み。排出量の削減に動機づけを与え、市場メカニズムを生かして全体の排出量を減らすための制度で、欧州では05年に導入された。