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ロシア、軍事侵攻トップに参謀総長 大規模攻撃の布石か

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ロシア国防省は11日、ショイグ国防相が同日付でウクライナ軍事侵攻を指揮する現場の最高司令官に当たる統一部隊司令官にワレリー・ゲラシモフ参謀総長(67)を任命したと発表した。現地司令部を格上げし、劣勢に立たされるロシア軍を立て直す狙いだ。近く大規模な軍事作戦で攻勢に転じるための布石だとの見方もある。

ゲラシモフ氏は2012年11月、大統領令によりロシア軍参謀総長に任命された。ロシア軍の作戦立案の最高責任者であり、22年2月の侵攻開始に向けた軍事作戦の立案でも、ショイグ氏らとともに中心的な役割を果たした。

ゲラシモフ氏が侵攻作戦の総司令官に任命されたことに伴い、司令部が再編された。これまで侵攻を指揮してきたスロビキン航空宇宙軍総司令官に加え、地上軍のサリュコフ総司令官とキム参謀総長代理の合計3人が、副司令官となる。

国防省は11日の発表で、ロシアが「特別軍事作戦」と呼ぶ侵攻の最高司令官へのゲラシモフ氏任命について「その実施過程で解決すべき課題の規模拡大と関係している」と説明した。「規模拡大」がウクライナでの大規模な作戦を示唆する可能性がある。

さらに国防省は、司令部の再編・強化について、陸軍や空軍など様々な軍の「より緊密な協力を実現する必要性」や補給体制の質の向上、部隊の効率的な指揮も挙げた。供給不足が批判される装備の補給や部隊間の連携の強化を進めるとみられる。

ロシア軍は22年9月以降、米欧の軍事支援を受けたウクライナ軍の攻勢で占領地域を次々と失ってきた。兵力の損失に悩むプーチン大統領は同月、「部分動員令」を出して30万人の兵士を補充し、訓練を積んできた。

こうしたロシアの動きに対し、ウクライナ側では、ロシア軍が形勢を一気に逆転しようとして、23年初めに大規模な軍事作戦を仕掛けるとの見方を強めていた。ロシアは当面目標としている東部のドネツク、ルガンスク2州の全域占領などを急ぐとみられている。

米英も警戒を強めている。バイデン米大統領は先週、記者団に「ウクライナの戦争は重大な地点にある」と語り、ウクライナへの軍事支援を拡大する方針を強調した。

現地司令部のトップを参謀総長が兼ねるのは異例だ。22年10月にスロビキン氏が侵攻の総司令官に就いた。エネルギー関連などのインフラを攻撃し、戦意喪失を図ったが戦況は好転しなかった。

業を煮やしたプーチン氏がスロビキン氏を降格する一方、作戦立案のトップであるゲラシモフ氏に劣勢が続く侵攻の責任を負わせたとも解釈できる。司令部が格上げされても武器の不足や士気の低下などロシア軍が抱える問題が改善されるかは不透明だ。

部隊の効率的な指揮を確立するという狙いには、東部の前線で主力部隊となっている民間軍事会社「ワグネル」との連携を円滑にする狙いも伺える。

ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏はプーチン氏に近く、ロシア軍幹部には批判的とみられている。司令部の格上げでプリゴジン氏の影響力を抑え込む思惑も指摘されている。

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