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英蘭シェル、2050年までに脱炭素 石油「19年がピーク」

(更新)

【ロンドン=篠崎健太】英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは11日、温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする中長期戦略を発表した。これまでの計画から踏み込み、販売する製品の消費で生じる分も含めたサプライチェーン(供給網)全体で達成をめざす。石油の生産量は「19年がピーク」とし、年1~2%ずつ減らしていく。気候変動対応を迫られる石油メジャーの脱炭素の動きが加速する。

エネルギー1単位あたりの二酸化炭素(CO2)の純排出量を16年比で、23年に6~8%、30年に20%、35年に45%それぞれ減らす中間目標も立てた。18年を頂点に減少に転じており、低炭素エネルギーの比重を高めながら50年までに100%減とする。

20年4月に打ち出した従来の50年実質ゼロの目標は、自社の操業や電力消費などで生じる「スコープ1」と「スコープ2」の排出量が対象だった。新たな目標は、販売したエネルギーが使われることで生じる分などの「スコープ3」も含む。排出量全体の約9割を占める供給網にも広げて脱炭素に取り組む。

ベン・ファン・ブールデン最高経営責任者(CEO)は11日のオンライン説明会で「販売する物を変えていかなければならない。より低炭素のエネルギー構成が必要だ」と強調した。

達成に向けた具体策として、石油への依存度を徐々に下げ、温暖化ガス排出量が少ない天然ガスや、再生可能エネルギーによる電力などの販売を増やす。CO2の回収・貯留(CCS)技術を開発し、操業時の放出の食い止めを図る。CO2を吸収する森林育成・保全への投資も進める方針だ。

資源開発や生産などの上流部門では、石油生産量は30年にかけて年1~2%のペースで落としていくとした。エネルギー転換に必要な資金の創出源として引き続き重要な地位を占めるものの、資産売却なども図りながら徐々に石油依存度を下げる。新たな領域での資源探査は25年までに終え、その後は手掛けないことも明らかにした。

欧州の石油メジャーでは英BPや仏トタルも、温暖化ガス排出量を50年までに実質ゼロとする目標を20年に表明した。ただ両社とも実質ゼロは自社の操業で生じる分が対象で、新たに供給網全体の削減を掲げたシェルはさらに踏み込んだ。

背景には、気候変動リスクへの対応圧力が社会や株主から強まっていることがある。シェルは今年5月に開催予定の株主総会に、エネルギー転換の計画を提示して賛否を問う。計画は3年ごとに更新するとともに株主総会で毎年賛否を問う予定だ。株主の支持を取り付けながらエネルギー転換を図る。

英ウォーリック大のデービッド・エルムズ教授(エネルギー研究)は新戦略を評価しつつ「変革を実行するだけの余裕を確保できるかが問題だ」と指摘する。利益水準や市場の信認を保ちながら低炭素への転換を図れるかが課題となる。

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