パンデミック宣言から2年 コロナとの共存模索

【パリ=白石透冴、ウィーン=細川倫太郎】世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスがパンデミック(世界的流行)に該当すると宣言して11日で2年となる。変異型「オミクロン型」の感染はピークを超えたが、次の強力な変異型が現れる恐れは消えない。いつ社会を正常化するか、共存の模索が続いている。
「パンデミックはまだ終わっていない。ウイルスは進化を続けている」。WHOのテドロス事務局長は9日、記者会見で強調した。高い警戒水準を要求する「懸念される変異型(VOC)」は今後も現れるとみており、油断してはいけないとくぎを刺した。
英オックスフォード大学の研究者らでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」によると、世界の1日あたり感染者数(7日移動平均)は変異型「オミクロン型」によって1月下旬に過去最多となる約340万人を記録した後、現在は約160万人まで下がっている。オミクロン型は重症化率が低く、死者数は減少傾向だ。
いち早く社会の正常化を決めた英国は2月下旬にコロナ規制を全廃した。フランスはワクチン接種証明の提示義務を3月14日に原則撤廃、米国では最後のハワイ州が25日いっぱいでマスク着用義務を終了する。
米ファイザーの「パクスロビド」、米メルクの「モルヌピラビル」など治療薬も相次いで実用化されており、外出制限再導入などの恐れは減ったと判断した。
一方で緩和に慎重な国もある。ニュージーランドは欧州で順次解禁する観光客の受け入れも慎重で、再開は7月ごろとしている。オミクロン型が急拡大しており、対策の全廃は時期尚早だとみているのが理由だ。
感染力がさらに強いとみられるオミクロン型の派生型「BA.2」は現在、85カ国・地域以上で確認されていることも、慎重派が残る理由だ。
変異型が生まれるリスクを高めているのがワクチン接種の格差だ。EUや米国で1回以上接種を受けた人は人口の7割以上だが、アフリカでは2割弱にとどまる。感染する人が多ければ、それだけ変異型もできやすくなる。
WHOは22年半ばまでに全ての国で人口の70%がワクチン接種という目標を掲げるが、あと約3カ月での達成は不透明だ。
格差は先進国の買い占めだけではなく、途上国の脆弱な分配インフラも理由であることが分かってきた。
ロイター通信によると、分配の国際的な枠組み「コバックス」を使って配られるはずだった英アストラゼネカ製ワクチン3千万回分が、2021年に受け取りを拒否された。
使用期限が近づいており、廃棄してしまうだけだと考える途上国が相次いだためだ。実際ナイジェリアは21年11月に百万回分を廃棄している。コロナとの共存のために、ワクチン格差を生むこうした要因の改善が最大の課題となっている。