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英・EU、ワクチンで対立 EU大統領「英が輸出禁止」

(更新)
EUのミシェル大統領はEUが将来のワクチンの世界最大の生産地域になると訴える(写真は5日、ブリュッセルにて)=ロイター

【ロンドン=中島裕介、ウィーン=細川倫太郎】英国と欧州連合(EU)が新型コロナウイルスワクチンを巡って対立を深めている。EU側が唐突に「英国がワクチン輸出を禁止している」と表明し、英政府が駐英のEU高官に抗議するなど外交問題に発展した。世界へのワクチン普及で旗を振るべき先進国が「ワクチン・ナショナリズム」に陥りつつある。

発端となったのはEUのミシェル大統領が9日に配信したニュースレターだ。この中で「英国と米国は自国領土で生産したワクチンやその成分の輸出を全面的に禁止している」と指摘した。

これにジョンソン英首相は10日の英議会下院で「海外への販売阻止などしていない」と反論した。英外務省は、同日午前に同省の政務次官が駐英EU代表部の高官を呼び出したと発表した。ミシェル氏の発言に抗議し訂正を求めたとみられる。

ミシェル氏は10日、政治専門サイト「ポリティコ」の取材に「輸出禁止や制限には様々な方法がある」とさらに反論。「英国はどれだけワクチンを輸出したのか。その答えを聞いていない」と語った。EU側の本音は英国で生産されたワクチンの輸出が少なすぎる点にあるもようだ。

英首相官邸の報道官は10日、この指摘について「英国内外への供給は(各国政府などの)顧客と製薬会社など供給者との契約に沿って行われている」と記者団に述べた。実際に輸出量が少ないかどうかは明言を避けた。

英国に透明性を求めるEUだが、自らも輸出制限を手掛けている。イタリアは4日、自国で生産された英アストラゼネカ製の約25万回分のワクチン輸出を差し止めた。変異ウイルスが猛威を振るう伊国内向けとEUへの供給遅れの解消のため欧州委員会もこれを承認した。

EUが1月末に導入したワクチンの輸出制限措置は、EUが購入契約を結んだ製薬企業を対象に、域外に出荷する際の生産国での許可を義務付けている。今後も他の加盟国で輸出を阻止する動きが広がる可能性がある。

ワクチン接種の実績では、英国が全人口の3分の1以上が1回目の接種を終えた。一方でEU主要国では10%前後と遅れており、加盟国や域内の市民から不満も漏れている。英EU間のワクチンを巡る対立は簡単に収まりそうにない。

日米欧の主要7カ国(G7)は2月中旬のオンラインでの首脳会議で、コロナ危機脱却に向けて途上国も含めた世界中へのワクチン普及を加速する方針で一致した。これにはワクチン外交で途上国への影響力を増す中国やロシアに対抗する狙いもある。だが現実は先進国がワクチン供給を巡って揚げ足を取り合う構図に陥り、理想には遠い状況だ。

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