トルコ外相、4年ぶりサウジ訪問 孤立打開を模索
エジプトとも高官協議

【イスタンブール=木寺もも子、カイロ=久門武史】トルコのチャブシオール外相は10~11日、サウジアラビアを訪問し、同国のファイサル外相と会談した。外相の訪問は4年ぶりだ。中東地域で孤立するトルコはエジプトにも秋波を送り、関係修復に乗り出している。
チャブシオール氏は11日、サウジ外相との会談について「和やかで率直だった」と述べ、関係改善の足がかりになったとの認識を示した。
両国はイスラム教スンニ派の盟主の座を自負するライバルで、もともと距離があったが、2018年にトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館でサウジ人記者のジャマル・カショギ氏が殺害されると関係が悪化した。20年にはサウジでトルコ製品のボイコットが起き、今年1~4月のサウジへの輸出は前年同期に比べ9割超減った。
関係改善を急ぐのはトルコ側だ。大統領府の報道官は4月、ロイター通信に対し、サウジで行われた記者殺害事件の裁判の結果を「尊重する」と述べた。サウジのムハンマド皇太子の側近らが罪を免れた司法判断を批判し、独自に関係者を訴追していた立場から大幅な譲歩となる。
こうした動きの背景には、深まる孤立への焦りがある。20年にはトルコと対立するイスラエルとアラブ諸国が次々と関係正常化で合意した。21年1月には盟友のカタールと、サウジ、エジプトなどアラブ4カ国が断交を解除した。アラブ諸国は東地中海の境界を巡ってトルコと争うギリシャとガス田開発などで協力し、事実上のトルコ包囲網ができている。
トルコは5~6日、エジプトにも外務副大臣を送った。トルコが支援していたモルシ前政権が13年の政変で倒れ、現在のシシ政権になってから初めての正式な高官協議となった。エルドアン大統領は7日「関係再構築に向けて努力している」と語った。
エジプトは同国からトルコに逃れたイスラム主義組織「ムスリム同胞団」のメンバーへの圧力を強める思惑があり、トルコ側の歩み寄りに一定の評価を示す。報道によると、トルコに拠点を置く同胞団系テレビ局は今年、エジプトへの批判を抑制するようトルコ政府から要請を受けたという。
ただ、エルドアン氏はこれまで同胞団系のモルシ前政権を倒したエジプトのシシ大統領を「殺人者」などと非難し、サウジ人記者殺害事件ではサウジのムハンマド皇太子の関与をほのめかして揺さぶりをかけた。恨みは深く、トルコ外交への警戒はなお強い。