水素関連特許、日欧がけん引 IEAなど分析

【ブリュッセル=竹内康雄】国際エネルギー機関(IEA)と欧州特許庁(EPO)は10日、次世代技術と期待される水素に関する特許動向を分析した報告書を公表した。欧州や日本の特許出願が多く、水素を低炭素でつくる技術革新をけん引している。
報告書は水素の製造から貯蔵、流通などすべての段階に関連する技術を対象とし、2011~20年までに2カ国・地域以上で出願された特許を中心に分析した。
特許数を国・地域別に見ると、EUが28%でトップ、日本が24%、米国が20%だった。欧州ではドイツが11%でフランスが6%と続いた。報告書によると、日本の特許数の伸びは欧州よりも大きく、「水素の分野で強力な技術革新者だ」と評価した。中国や韓国も特許を増やしている。
技術別では、水素の製造技術に関連する内容が多い。足元の水素製造は天然ガスなど化石燃料由来がほとんどだが、再生可能エネルギーなど低炭素で水素をつくる技術の特許が増えているという。
水素の既存技術に関する特許は、仏エア・リキードや独リンデなど欧州の化学産業が製造部門で大きな存在感を示している。水素の最終消費の新技術では、トヨタ自動車や現代自動車、ホンダなど日本や韓国の自動車関連の特許出願が多い。航空や船舶関連といった電気で代替しにくい分野の特許数も徐々に増加している。
水素は燃焼しても、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出がなく、排出を実質ゼロにする目標実現に不可欠な次世代エネルギーと位置付けられる。ただ普及には製造コストの引き下げや、一段の技術の進展が必要で、各国や企業が開発に力を入れている。