核融合で技術革新 欧州研究、エネルギー2倍に
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【ロンドン=佐竹実】欧州の核関連研究所らでつくる「ユーロフュージョン」は9日、核融合の実験で過去の2倍のエネルギーを発生させることに成功したと発表した。クリーンな発電につながる画期的な結果だとしている。日本政府も核融合の研究開発に関する戦略を定める方針で、2050年をめどに核融合発電ができる国産の実証炉(原型炉)の運転開始を目指している。
実験は英国のオックスフォード近郊にある核融合実験装置「欧州トーラス共同研究施設(JET)」で行った。59メガジュールと、1997年の記録の2倍以上に達した。英国原子力エネルギー庁のイアン・チャップマン最高経営責任者(CEO)は「この画期的な成果により、科学と工学の最大の課題のひとつを克服することに大きく近づいた」と述べた。
核融合は太陽の内部で起きている。地球上で再現できれば、低炭素のエネルギーを大量につくり出すことが期待される。現在の原子力発電と異なり、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)も出ない。
ただ実用化には20年以上かかるとされている。英BBCは、政府が目指す50年までの温暖化ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)を実現するための解決策にはならないと指摘した。
米国では核融合ベンチャーへの投資が広がっているほか、英国は40年までに原型炉の建設を目指している。日本も核融合の研究開発に力を入れており、50年をメドに国産の実証炉の運転開始を目指す。日米欧中など主要国・地域が参加する国際熱核融合実験炉(ITER)で蓄積した技術を生かす。
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