ウクライナ全土に大規模攻撃、ロシアがミサイル70発

【ドバイ=福冨隼太郎】ウクライナ各地で10日、ロシア軍の大規模なミサイル攻撃があった。ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、ロシア軍が70発以上のミサイルを発射し、一部がモルドバとルーマニアの領空を通過したと述べた。ルーマニアは北大西洋条約機構(NATO)加盟国だが、同国国防省は通過を確認していないとしている。
ゼレンスキー氏はビデオ演説で「少なくとも60発は撃墜された」と明らかにした。ウクライナ軍のザルジニー総司令官によると、10日朝、ロシアの巡航ミサイル「カリブル」2発が黒海から発射され、ウクライナと接するモルドバとの国境を越えてルーマニアを通過した。最終的に3カ国の国境が接する地点を越えてウクライナ領空に入ったという。
ルーマニア国防省は同日、ミサイルが国境から北東に35キロメートル離れた地点を飛行したと発表した。ロイター通信によるとモルドバはミサイルの領空侵犯を確認し、ロシア大使を呼び出して抗議した。
ウクライナメディアはウクライナの防空部隊が同国南部オデッサ州でロシアのミサイル13発を撃墜したと伝えた。キーウ(キエフ)でも10発のロシアのミサイルを撃墜し、破片で住宅などが損傷した。
ロシア軍はウクライナ東部のドネツク州やルガンスク州などの制圧を狙った攻撃も続けている。ウクライナ軍は9日夕、それまでの1日でロシア軍から41回の空爆や3回のミサイル攻撃などを受けたと発表した。
ウクライナ軍の発表によると、ロシア軍は「ドネツクとルガンスク両州の領土を完全に支配しようと、集中的に攻撃を仕掛けている」という。ロシア軍が制圧を狙うドネツク州の要衝バフムトなどがロシア軍に砲撃された。「ウクライナ全域でロシアの空爆やミサイル攻撃の脅威は高いままだ」とも警告した。
米シンクタンク戦争研究所(ISW)は8日、ロシア軍がルガンスク州で新たに攻勢を始めたとの見方を示した。同州西部の前線では少なくとも3個師団が投入されたと指摘。ロシア側による攻撃が増え、前進しているとした。
英国防省は10日、バフムト近郊でロシア側が戦術的な利益を上げている可能性があるとの分析を明らかにした。バフムト北方で民間軍事会社「ワグネル」が2〜3キロメートル西に進軍しているという。ただ同省はロシア軍の部隊は経験が浅く、大きな犠牲を伴っている可能性があるとも指摘している。
ウクライナ国防省の情報総局は2日、ロシアのプーチン大統領が3月中にドネツクとルガンスク両州の全域を制圧するよう軍に指示したとの見解を明らかにしている。ロシアが2月中に大規模な攻撃を始めるとの警戒が広がる一方で「攻撃のための弾薬や部隊が不足している」(英国防省)と、作戦を疑問視する声も出ている。
ウクライナは攻勢に向けて、欧米各国が支援を決定した戦車に加えて戦闘機の提供も求めている。同国のゼレンスキー大統領は9日、欧州連合(EU)首脳会議に出席した後のブリュッセルでの記者会見で「多くの指導者が航空機を含む武器や支援を提供する準備があると聞いている」と述べ、期待感を示した。
一方、米ブルームバーグはEU当局者の話として「ゼレンスキー氏に戦闘機の提供を約束した者は今のところいない」と伝えた。
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