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ドイツ、原発ゼロ22年達成へ、再生エネに急転換

ドイツは福島第一原発の事故をきっかけに脱原発にカジを切った=AP

【ベルリン=石川潤、フランクフルト=深尾幸生】ドイツの脱原発政策が最終局面を迎えている。残り6基となった原発を22年末までに停止し、再生エネルギーを軸とした電力供給へと切り替える。エネルギー業界の経営にも大きく影響している。

ドイツのメルケル政権は2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、原発の早期廃止の検討にいち早く着手した。脱原発の市民運動の広がりと地方選挙での緑の党の躍進も後押しとなり、11年5月、22年までの脱原発を決めた。

11年に17基あったドイツの原発はすでに11基が停止し、再生エネルギーへの転換が急速に進んだ。電力全体に占める原子力の割合は10年の22%から20年に11%に低下。その分、風力や太陽光などの再生エネは17%から45%に高まった。

原子力から手を引けば、電気料金が跳ね上がり、産業が大打撃を受けるーー。10年前にはこんな懸念が広がった。実際に再生エネルギーを高く買い取るために電力料金に上乗せされる賦課金が重く、家庭用の電力の小売価格は10年から20年にかけて3割以上値上がりした。

ただ一方で、産業用の電力は競争政策などで「一般家計よりもかなり低い水準に抑えられている」(独シンクタンクのアゴラ・エナギーヴェンデ)。脱原発を進めた時期と、巨額の経常黒字でドイツ経済が独り勝ちといわれた時期はぴたりと重なっており、少なくとも経済に壊滅的な打撃を与えてはいない。

技術革新で再生エネのコストは下がり続けている。電力料金も21年は値下がりする見通しだ。独電力大手、RWEのマルクス・クレッバー次期社長も「再生エネの方が(伝統的な発電よりも)長い目で見て安い技術になる」と語る。

脱原発には①電力の安定供給が脅かされる②石炭火力が増えて二酸化炭素排出(CO2)が増える③原子力が多いフランスからの電力輸入が増えるだけーーとの指摘もあった。だが実際には停電時間は短くなり、発電量あたりのCO2排出量も3分の2に減り、ドイツは電力の純輸出国の地位を維持している。

4大電力会社のうち、独RWEと独エーオンは18年に事業交換し、RWEが再エネ、エーオンが送電・小売りに集中する戦略を鮮明にした。独政府が38年の石炭火力廃止を決めたこともあり、ドイツで電力事業を展開するバッテンファル(スウェーデン)、独EnBWも再エネへのシフトを大胆に進める。

欧州でもすべての国がドイツと同じ道を進んでいるわけではない。ベルギーやスペインも脱原発を決めた。これに対して、英国やフランスは原発政策を維持、脱石炭を進めるために原発新設を検討するポーランドのような国もある。

原発を巡っては、安全基準の強化などで工事は長期化し、建設費は高騰している。フランスのフラマンビル原子力発電所は12年稼働の予定が23年以降にずれ込み、予算は33億ユーロ(約4200億円)から124億ユーロへ増えた。原発は本当にコストに見合うものなのか。10年前に投げかけられた問いは、さらに重みを増している。

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