英分裂リスクじわり スコットランド議会選、独立派過半数
【ロンドン=中島裕介】欧州連合(EU)から離脱した英国で分裂のリスクが高まっている。英国を構成する4地域の一つであるスコットランドでは6日投票の地方議会選で分離独立を志向する勢力が合わせて議席の過半数に達した。英領北アイルランドではアイルランドとの統一論が勢いを増している。「連合王国」の結束の揺らぎは、国力のさらなる低下につながりかねない。
7~8日に開票された英北部のスコットランド議会選では地域の独立を目指す与党スコットランド民族党(SNP)が全129議席のうち64議席を獲得した。過半数に1議席届かなかったが、改選前議席を3上回った。緑の党も8議席を獲得し、2党合わせた「独立派」は6増となった。

国政の与党でジョンソン首相が率いる保守党は第2党の座は守ったが、獲得したのはSNPの半分以下の31議席にとどまった。
議会選は6日投票の英統一地方選の一つとして行われた。2016年の英国のEU離脱を問う国民投票では英全体では離脱派が勝ったが、スコットランドでは62%が残留を選んだ。今回の選挙はEU離脱に反発する市民が独立志向を強めていることをうかがわせた。
スコットランド行政府(地方政府)首相でSNP党首のスタージョン氏は勝利が確定した直後の演説で「(独立を問う)住民投票の実施は民主主義の根幹に関わる問題」だと力説。分離独立を目指す姿勢をみせた。
SNPは新型コロナウイルス危機からの脱却を条件に、議会の5年の会期の前半での住民投票実施を公約している。だが正当な住民投票を実施するには、中央政府の承認が必要だ。

ジョンソン氏は7日、英紙テレグラフの取材に「人々が経済の回復を求めているときに、国を引き裂く論争を起こすべきではない」と語り、住民投票を認めない姿勢を明確にした。
スタージョン氏は投票に反対するジョンソン氏を「民主的な正当性は全くない」と強く批判するが、選挙期間中、政権が認めない非公式な住民投票を強行しない姿勢を明確にしている。一方でスコットランド議会で住民投票に関する法案を成立させたうえで、投票実施の是非を法廷闘争に持ち込む戦略も検討している。
英アバディーン大のキーティング教授は、独立派が過半数を得たとはいえ英国の裁判所が住民投票を認めるとは限らないと指摘する。一方で「政府側も14年に住民投票を行った前例があるのに、今回はなぜ拒否するのか。明確な説明を求められるだろう」と分析する。
前回の14年の住民投票では45%対55%で「独立」は敗れたが、足元での賛否は拮抗している。
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