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米欧「適度なインフレ」腐心 ECB、物価目標2%に

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ECBは景気回復へ金融緩和を粘り強く続ける構え=ロイター

米欧の中央銀行が「適度なインフレ」に腐心している。欧州中央銀行(ECB)は8日、金融政策運営の目標とする物価上昇率を「2%近く」から「2%」に変更。物価の上振れを一時的に容認することで緩和の継続姿勢を示し、デフレや低インフレに陥るのを防ぐ。米国は量的緩和の縮小に向けて市場との対話を始めたが、物価上昇が「一時的」との見方は崩していない。緩和的な金融政策の継続は、景気・物価の過熱や資産バブルのリスクと背中合わせでもある。

【ベルリン=石川潤、ロンドン=篠崎健太】ECBは8日、目標とする物価上昇率を「2%未満でその近辺」から「2%」に変更した。先進国の物価が上がりにくくなるなか、日米欧の中央銀行が一時的な上振れを容認することで足並みをそろえた格好だ。

ECBが物価目標を変更したのはデフレや低インフレの定着を避けるためだ。声明では物価上昇率について、2%の目標から「下方向にも上方向にも乖離(かいり)することは同じ程度に望ましくない」と明記した。上限の色彩が濃かった従来の表現を改めることで、金融緩和を粘り強く続けるという姿勢を示した。

利下げや量的緩和の拡大といった政策手段が限界に近づくなか、長期的な緩和の継続を約束する「時間軸政策」によって、緩和の効果を高める狙いがある。

ECBの決定は、日米英の中央銀行と足並みをそろえるものといえる。米連邦準備理事会(FRB)は20年8月に「平均物価目標」を導入している。物価が2%を下回った場合、その分を埋め合わせるために2%を上回るインフレを目指すことで、平均して2%の物価上昇を確保するという考え方だ。日銀も物価2%超えを容認する「オーバーシュート型コミットメント」と呼ばれる政策を導入済みだ。

日米欧がそろって物価2%超えを容認するのは、先進国で物価の上がりにくい状況が強まっているためだ。中銀に期待される役割がインフレの抑止という伝統的な領域から、デフレや低インフレの回避へと広がっていくなか、物価にキャップをはめるような従来の目標はなじまなくなっている。

英イングランド銀行は新型コロナウイルス禍からの回復過程で、英国の物価上昇率が3%を上回る場面があるとみている。だが「一時的な強さに過剰反応しないことが大事だ」(ベイリー総裁)として中期で2%をめざす構え。ベイリー氏は今月1日の講演では「早まった金融引き締めで経済回復を損なってはならない」と強調した。

オンラインで記者会見するラガルドECB総裁(8日)

中銀がより粘り強く緩和を続けると約束すれば、企業や家計は物価が上がりやすくなると判断し、投資や消費に積極的になる可能性がある。値上げや賃上げにも動きやすくなり、物価上昇圧力を高めることにつながる。

実際にどれだけの効果があるかは読みにくい部分もある。日本のように2%超えを容認しても、なかなか物価が上がらない国もある。「どうせ物価は上がらない」という見方が企業や家計にいったん定着してしまうと、中銀がいくら積極的な姿勢を示しても、自己実現的に低インフレが続いてしまう傾向が指摘される。

米国のように物価が力強く上昇し始めた場合に、金融引き締めが後手に回りかねないという新たな問題も浮上しつつある。物価目標に中銀が手足を縛られることになれば、景気や物価の過熱を招き、株式や不動産価格の行き過ぎた上昇を招くリスクもある。物価を目標にする限界もあり、金融政策運営の難度は増している。

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