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独ボッシュ、半導体新工場を稼働 「不足緩和に貢献」

【フランクフルト=深尾幸生】自動車部品世界最大手の独ボッシュは7日、独東部ドレスデンに半導体の新工場を開いた。最新の生産技術を導入し、生産能力は大幅に増える。自社向けが中心だが、間接的に半導体不足の緩和につながると期待する。

同社の単独の投資としては最大の10億ユーロ(約1330億円)を投じた。当初の予定より6カ月前倒しで、まず7月から自社の電動工具向けに電力制御に使う「パワー半導体」の生産を始める。9月からは車載向けの「ASIC(特定用途向け半導体)」も生産する。エアバッグや横滑り防止装置などの自動車部品の制御に使うオーダーメードの半導体だ。

2020年後半から車載半導体が世界的に不足している。ボッシュはその対応として生産を前倒ししたわけではないが、オンラインで開いたイベントでフォルクマル・デナー社長は「業界全体の圧力を緩和することに貢献できる」と強調した。

新工場では人工知能(AI)を使ってデータを分析し、生産速度や歩留まりの向上につなげる。生産能力は明らかにしていないが、先端の300ミリウエハーを使ううえ、クリーンルームの面積も既存工場の約2倍あるため、単純計算で4倍以上に増やせるとみられる。既存工場で200ミリウエハーで生産しているASICも段階的に新工場に移し、既存工場では空いたスペースでスマートフォンや自動車に使うセンサーを増産する。

ボッシュは車載センサー半導体では世界首位。パワー半導体とASICも今後需要が増えるとみて、17年にドレスデン工場の新設を決めた。新車1台が搭載するボッシュの半導体の数は16年に約9個だったのが19年に約17個に増えた。運転支援システムや「つながるクルマ」、電動化の普及が背景にある。

ドイツ電気電子工業連盟(ZVEI)によると、1台の新車に占める半導体の価格は1998年の120ユーロから18年に500ユーロに増え、23年には600ユーロを超える見通し。電気自動車(EV)はさらにその金額が増える。

ドイツでの半導体の新工場の稼働は、ドイツや欧州連合(EU)にとっても朗報だ。開所式にはメルケル首相や欧州委員会のベステアー上級副委員長(競争政策担当)もオンラインで参加した。独政府はこの工場を国内に設けるために2億ユーロを拠出。メルケル氏は「ドイツと欧州はアジアや米国との差を埋めたい。そのためには大胆でなければならない。少しずつという考えではテクノロジー集積地の標準にはなれない」と述べ、ボッシュの投資を歓迎し、政府による支援を自賛した。

EUは一般的に加盟国の企業に対する補助金に厳しい規制を設けている。だがEUにとって重要な政策に対しては国の補助を例外的に認めている。ボッシュの新工場は「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」として電池工場などとともに認めた経緯がある。

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