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ワクチン特許放棄、欧州内でも温度差 独仏に隔たり

ドイツのメルケル首相はワクチン特許の一時放棄に慎重な構えだ(写真は5日)=ロイター

【ベルリン=石川潤】新型コロナウイルスワクチンの特許権の一時放棄を巡って、米欧の足並みが乱れている。バイデン米政権が前向きな姿勢に転じる一方で、ドイツのメルケル政権は6日、反対する考えを示した。交渉が長期化して一時放棄を求めるインドなど途上国の不満が高まれば、積極的なワクチン外交を展開する中国やロシアに付けいる隙を与えかねない。

「ワクチン製造を妨げているのは、生産能力と高い品質水準(の問題)であって、特許ではない」。ドイツ政府の報道官は6日、特許権の一時放棄に反対する姿勢を明確にした。ドイツにはワクチン開発で先行するビオンテックの本拠がある。報道官は「知的財産の保護はイノベーションの源泉で、将来もそうでなければならない」と語った。

製薬会社もドイツと同じ立場だ。米ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は「これから始めようとしても1~2年で作れるとは思えない」と指摘。米モデルナのステファン・バンセルCEOも6日、「特許を放棄しても供給量は増えない」と述べた。

そもそも欧州では、ワクチンが途上国に広がらないのは、米国などが輸出を制限してきたためだという不満が根強い。欧州連合(EU)のフォンデアライエン委員長は6日、「欧州からは90カ国以上に(ワクチンを)輸出している」と強調した。米国は自分たちへの風当たりが強まってきたので、特許権の一時放棄に問題をすり替えたのではないかとの疑念もくすぶる。

ただ、欧州も一枚岩ではない。フランスのマクロン大統領は6日、特許権の一時放棄に「完全に賛成する」と語った。特許権を持つ製薬会社を抱えているかなどで各国には温度差があるほか、国際的な批判を受けることへの警戒もある。EUは7日からポルトガルのポルトで開く首脳会議でこの問題を討議するが、議論は難航が必至だ。

ワクチンの特許権の一時放棄はこれまでインドや南アフリカなどが求めてきた。英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、少なくとも1回ワクチンを接種した人の割合は5日時点で英国が51%、米国が44%、ドイツが30%なのに対し、インドは9%、南アフリカは0.6%にとどまる。

米欧と途上国のワクチン接種のスピードの違いは明らかで、ワクチン開発に成功した米欧の自国優先主義への批判は根強い。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も「(ワクチン特許の)一時停止は重要だ。各国首脳は実現してほしい」と訴えていた。

このまま米欧の溝が埋まらなければ、失望した途上国は中国やロシアへの依存を強めかねない。インドのモディ首相は4月28日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ロシア産ワクチン「スプートニクV」をインドで製造することを確認した。中国も中南米や中東欧などでワクチン外交を進める。

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