トルコ・シリア地震、地震対策に不備 老朽建築など倒壊

【イスタンブール=木寺もも子】6日にトルコ南部で起きた地震は、内戦で疲弊したシリアや難民の多く暮らすトルコ南東部に大きな被害を広げた。現地は地震が発生しやすい断層地帯だが、地震対策は不十分だったとみられる。国際社会は支援を表明しているが、被害はさらに拡大する懸念が強い。
米地質調査所(USGS)によると、6日の地震はトルコ南部から東部にかけて走る東アナトリア断層付近で起きた。南側のアラビアプレートが北側のアナトリアプレートを押す構造で、トルコ災害緊急事態対策庁(AFAD)は今後1年にわたって余震が続く可能性を警告している。

トルコは地震国で、1999年のイズミット地震では約1万7000人が死亡した。この地震をきっかけに耐震基準が強化されたが、政府は22年時点で、基準を満たさない建物が全国に670万棟あるとしていた。AFADは7日午前、今回の地震で倒壊した建物が5700棟超に上ると明らかにした。
トルコでは民間の建物を建て替える際、建設業者に建て増し分を譲るかわりに無償で施工してもらうことがある。商業的に価値の高い建物での建て替えが優先され、危険度の高い低所得者層の居住地区は放置されたままになりやすい。
南東部は1人当たり国内総生産(GDP)が9600ドル(約130万円、2021年)のトルコの中でも低所得層が多く、国境を挟んだシリアから逃れてきた難民も多く暮らす。中心地で人口約250万人のガジアンテプの難民は20年時点で40万人超に上っていた。
ガジアンテプ、ハタイ県などはローマ時代の遺跡も多い。アナトリア通信によると、2〜3世紀ごろに見張り塔として建設されたガジアンテプ城は壁が大きく崩れた。
シリアの状況はより困難だ。11年に始まった内戦はアサド政権、反体制派、過激派組織「イスラム国」(IS)などが入り乱れ、国土は荒廃した。ロシア、イランの支援を受けたアサド政権が優位を固めたが、北西部は反体制派が支配する。地震の被害情報も現地で活動する民間団体が発信している状態だ。
北西部の国内避難民の多くは簡素な住宅で暮らしている。シリアから伝わる地震被害の情報は限られるが、内戦で損傷した建物も多く、地震被害を広げた可能性がある。
自国民を虐殺・弾圧するアサド政権はロシア、イランなど一部を除いて外交関係が希薄で、経済制裁下にある。近年、関係改善の動きがあるアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領は6日、アサド大統領と電話で協議して救助チームの派遣を指示したが、政権と協調する動きは限定的だ。
米国は6日、トルコ・シリア両国への支援を決め、バイデン大統領はトルコのエルドアン大統領と電話で協議した。一方、米国務省のプライス報道官は「トルコには政府内にパートナーがいるが、シリアには現場で人道支援を行う非政府組織(NGO)のパートナーがいる」として、アサド政権と直接やりとりする考えはないことを強調した。