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イラク総選挙 ポピュリスト勢力が首相ポストうかがう

【イスタンブール=木寺もも子】10日に実施されるイラク議会選(定数329)で、イスラム教シーア派指導者ムクタダ・サドル師が率いる勢力が勢いを見せている。熱狂的な支持を背景に首相ポストをうかがうが、対外強硬のポピュリストとして知られる同師には反対派の拒否感も強く、どこまで議席を伸ばすかが焦点になりそうだ。

「我々は首相ポストを取る」。3日、政党連合「行進者たち」を率いるシーア派指導者のサドル師は中部ナジャフで開いた集会で訴えた。前回の2018年選挙では54議席を獲得して第1党に躍り出たが、首相ポストを得るには至らなかった。今回は議席倍増を狙う。

フセイン政権の崩壊以降で5回目となる今回の議会選は、政治や経済低迷に不満を持つ若者らのデモをきっかけに、22年の予定から初めて前倒しで実施される。だが、デモに参加した民主化勢力は分断や既存勢力による妨害のため、まとまった議席獲得は難しいとみられている。有力視されるのがサドル師の勢力だ。

自らは選挙に出馬しないサドル師は自派から首相を出し、影響力を行使したい考えだ。イラクのシーア派最高権威シスタニ師は90歳を超える。首相ポストを押さえて権力基盤を固めれば、サドル師にはシスタニ師の後継の座も見えてくる。

サドル師はポピュリストとして知られ、貧困層への物資の配布や既存政治への批判、反米などの対外強硬姿勢で貧困層や一部の若者から熱狂的な支持を集める。一方、過激な言動や、自身が抱える民兵組織が少数派のスンニ派を弾圧したという過去の疑惑などから、警戒する勢力は国内外に多い。

シスタニ師は9月末、有権者に投票を促す声明を発表した。イラクでは国民の間で選挙の公平さや透明性に対する不信が強く、前回40%台だった投票率がさらに低下する可能性が指摘されていた。シスタニ師は自身の政治的中立を強調したが、熱心な固定支持層を持ち、低投票率が有利に働くサドル師の勢いをそぐのが狙いとみられる。

米国がフセイン政権を打倒して以降、イラクではアラブ系のシーア派、スンニ派、少数民族のクルド系などがそれぞれ外国と結びつきながら内部で派閥、権力闘争を繰り広げ、不安定な政治が続く。20年5月に就任したカディミ首相は実務家出身で権力基盤は弱い。年内には米国が駐留部隊をイラクから撤収させる方針を示しており、情勢はさらに流動化しかねない。

イラクに強い影響力を持つ隣国のイランは、自国の干渉にも反対の立場を取るサドル師を警戒し、別のシーア派政治勢力を支援する。一方、サドル師は選挙後、クルド系勢力との協力を模索しているもようだ。選挙には不正投票や操作への懸念もつきまとっており、結果次第では周辺国を巻き込む政治混乱の長期化や民兵同士の武力衝突などに発展する恐れもある。

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