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スエズ座礁船、賠償交渉決着 合意署名で3カ月ぶり出航

(更新)

【イスマイリア(エジプト北部)=久門武史】エジプトのスエズ運河で3月に座礁した大型コンテナ船「エバーギブン」を巡る賠償問題について、所有する正栄汽船(愛媛県今治市)側とスエズ運河庁は7日、合意文書に署名した。賠償額は明らかにしなかった。留め置かれていた船が同日、3カ月ぶりに運航を再開した。

賠償交渉では運河庁が5億5千万ドル(約600億円)の賠償を求めたのに対し、船主側は1億5千万㌦を提示し調整が長引いた。運河庁は当初、座礁船の再浮上にかかった費用や「風評被害」の賠償として9億1600万ドルを請求し、船主責任保険を引き受けるUKクラブが「大部分は根拠が乏しい」と疑問を呈していた。

エバーギブンは3月23日に座礁し、6日間にわたり運河を遮断した。運河庁がしゅんせつやタグボートを使った作業で同29日に再浮上させたが、計422隻が運河内や両端で足止めされた。

運河庁のラビア長官は署名式後の記者会見で、賠償の詳細は「秘密保持契約のため明らかにできない」とした。合意の一環として、えい航能力75トンのタグボートを船主側から受け取ると述べた。

事故原因については「全面的に船の船長の責任だ」として運河庁の過失を重ねて否定した。船主側は運河庁の水先案内人が先導していた点を指摘し、責任の所在でも対立があった。

スエズ運河は1956年にエジプトが国有化した国を象徴するインフラで、運河の収入は国内総生産(GDP)の2%を占める。座礁船を離礁させた3月、シシ大統領は「エジプト国民はスエズ運河の危機を終わらせることに成功した」と誇っており、国威を傷つけるような決着は初めから選択肢になかったとの見方がある。

エジプト政府は5月、スエズ運河の南側を拡張する計画を明らかにした。再発防止への取り組みをアピールしたが、事故原因の調査報告書も公表しておらず、今回の教訓を世界で共有するのは難しい。

運河庁は賠償交渉の決着まで船を運河内の湖に留め置くとし、エバーギブンはエジプトの裁判所の命令で3カ月係留された。この間、積み荷とともに身動きがとれなかった。荷主や保険会社にもスエズ通航のリスクを意識させる結果となった。

スエズ運河は国際海運の要で、アジアと欧州を結ぶ主要航路だ。座礁事故はこの大動脈を塞ぎ、供給網(サプライチェーン)を圧迫した。直接足止めされた船は通航再開から5日で通過し終えたが、混乱の余波は欧州の主要港にまで及び、正常化に時間を要した。

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