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エチオピア、巨大ダム貯水再開 下流のエジプト抗議

建設中の大エチオピア・ルネサンスダム(19年)=ロイター

【カイロ=久門武史】エチオピアがナイル川上流で開発する巨大ダムで、2020年夏に続く2回目の貯水を始めた。水不足を恐れる下流のエジプトとスーダンが強く反発し、国際社会の調停を求めていた。議論は平行線をたどっており、アフリカ北東部の緊張を高める火種になっている。

エチオピアは5日、アフリカ最大級の「大エチオピア・ルネサンスダム」で今年の貯水を始めたとエジプトに通告した。昨年7月に49億立方メートルを貯水して1回目の完了を宣言した。アビー首相は「次回の貯水は大雨の降る7~8月だけだ」と今年4月に予告していた。

エジプトの水資源・かんがい省は貯水開始の通告を受け、5日に「明確に拒否する」との抗議声明を出した。エジプトとスーダンはナイル川に水の大部分を頼っており、上流で水量を左右されることに危機感を抱く。水の利用に関する法的拘束力のある合意を求めているが、エチオピアは拒否してきた。

アフリカ連合(AU)が協議を仲介しようとしたが、進展はない。国連安全保障理事会はこの問題を8日に協議する予定だ。しかし双方の隔たりは大きく、対立が解消する可能性は低い。

「エチオピアの関心は国の電力需要を満たすことだけだ」。アビー首相は5日の議会質疑で、ダム貯水で他国に害を及ぼす意図はないと強調した。

同国は2000年代半ばから年10%前後の経済成長を続けたが、世界銀行によると日常的に電気を使えるのは人口1億1千万人の半分にすぎない。膨らむ電力需要を賄うのは政権の急務だ。ダムのフル稼働後の水力発電の能力は6450メガワットを見込んでいる。

昨年の貯水は豪雨に合わせて実施され、下流で水不足による被害は伝えられなかった。ただ渇水時に上流で水がせき止められれば、エジプトなどには安全保障を脅かす問題になる。

エジプトのシシ大統領は3月に「一滴の水もエジプトから奪えない。そうなれば地域は想像もできないほど不安定になる」と警告した。同国とスーダンは合同軍事演習を重ね、エチオピアに圧力をかけてきた。

しかしエチオピアは国の威信を懸けたダム開発で対外的に譲歩しづらいとの見方がある。昨年からの北部ティグレ州での戦闘で少数民族ティグレ人勢力が州都メケレを奪還し、アビー氏の連邦政府軍は撤退を余儀なくされた。カイロ大のアイマン・シャバナ教授は「エチオピアは内政の危機を覆い隠すため政治的にダム問題を利用している」と指摘している。

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