トルコとエジプト、関係修復目指す 高官協議
【カイロ=久門武史、イスタンブール=木寺もも子】トルコとエジプトの外務省高官が5、6両日に会談し、8年前に冷え込んだ関係の修復に向け協議した。バイデン米政権の発足などで孤立を深めるトルコはエジプトをはじめアラブ諸国との関係改善を急いでいる。
両国の外務省はエジプトの首都カイロで開いた次官級協議後、共同声明で「2国間の問題とリビア、シリア、イラク情勢など地域の問題を扱った」と発表した。トルコとエジプトの関係は2013年のエジプトの政変で悪化し、互いに大使を追放していた。トルコのエルドアン大統領はエジプトのイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」主導の政権と親密で、この政権を13年に倒したエジプト軍を率いたシシ大統領を「殺人者」と非難した経緯がある。
トルコは関係改善と引き換えに、国内にかくまっている同胞団関係者への支援を弱めるとみられる。複数の報道によると、トルコを拠点とする同胞団系テレビ局は今年に入り、シシ政権への批判を抑制するようトルコ政府から要請を受けた。
トルコがアラブ諸国との関係立て直しを急ぐのは、外交的に孤立を強めているからだ。20年にトルコと対立するイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)などアラブ諸国が国交樹立で合意した。21年1月にはトルコの盟友カタールとエジプト、サウジなど4カ国が断交を解除した。
欧州連合(EU)とも東地中海のガス田権益を巡って対立するなか、トルコの外交や人権状況に批判的なバイデン米政権が誕生した。逆風が強まり、エルドアン氏を支える与党内でも「同胞団への過度な肩入れは不利益が多い」との声が上がっていた。一方、シシ氏はエルドアン氏との和解によって、トルコに逃れた同胞団メンバーへの圧力を強めたい考えだ。