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アフリカの天然ガス、欧州に供給増 ロシア産を代替

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

ウクライナに侵攻したロシアからのガス調達の削減を急ぐ欧州に対し、アフリカの天然ガス生産国が供給を増やそうとしている。米国などと比べて地理的に近く輸送費を抑えられる利点を生かし、アフリカのエネルギー大手が欧州の主要国と相次いで接近する。ただアフリカは政情不安のリスクも高く、中長期で安定してガスを開発・供給するための課題は少なくない。

「欧州市場へのガス供給に関心を持っている」。西アフリカのセネガルのサル大統領は5月、同国を訪れたドイツのショルツ首相と会談後、強調した。ショルツ氏は就任後初のアフリカ訪問で「セネガルを最初の滞在地に意識的に選んだ」と述べ、エネルギー開発への支援や投資を話し合ったと明らかにした。

セネガルは沖合の大西洋で大規模ガス田がみつかり、英石油大手BPが2017年に開発に参入した。23年にも液化天然ガス(LNG)の生産を始める。米国産LNGに比べ欧州への船賃の安さが期待され、有望な供給国に急浮上している。

欧州市場を見据える動きは目立っている。4月にはアフリカ最大の産ガス国、アルジェリアの国営炭化水素公社とイタリア炭化水素公社(ENI)が契約を交わし、アルジェリアはイタリア向けに天然ガスの供給拡大を進める。ドラギ伊首相はロシアへの依存を減らすという「戦略的目標に対する重要な答えだ」と指摘した。

ENIはエジプトのガス生産、LNG輸出の拡大についても、エジプトガス公社と合意したほか、コンゴ共和国ともガス供給増に向けて基本合意している。

矢継ぎ早にアフリカからの調達拡大に動くのは、欧州連合(EU)がロシア産ガスからの脱却にカジを切ったからだ。ロシアに頼るリスクを減らし、経済圧力を強める。EUの欧州委員会は3月、代わりにカタールや米国、エジプト、西アフリカからLNGの輸入を増やせるとし、アルジェリア産のパイプラインでの輸入にも期待を示した。

「ロシア産の禁輸後、欧州市場にとってアフリカは強力な代替供給源になる」。ノルウェーのエネルギー調査会社ライスタッド・エナジーのシバ・プラサド氏はこう指摘し、既存のパイプラインやLNG供給で築いた関係が強みになるとみる。アフリカ大陸の天然ガス生産量が30年代後半までに4700億立方メートルと、22年見込みより8割増になるとの見方を示した。

アフリカの資源国には自前の資金や技術が乏しい国が多く、欧州の急接近は開発の後押しになる。とはいえEUが21年に輸入した天然ガスの4割がロシア産だった。アフリカ諸国は計1割強、米国は約7%、カタールは約5%にとどまり、こうした国々から輸入拡大に動いても、直ちにロシア産の穴を埋めるのは難しい。

またアフリカには欧州に近い地の利がある半面、政情や治安を巡る不安がつきまとう。北アフリカのリビアはイタリアにガスを送るパイプラインがあるが、長引く政情混乱で生産が安定しない。アフリカ南東部モザンビークの天然ガス開発事業は、イスラム過激派の攻撃で停滞を余儀なくされた。

アルジェリアは隣国モロッコとの関係悪化で、同国経由のパイプラインでスペインに向かう天然ガス輸出を停止した。欧州へは他のパイプラインが稼働しているが、アフリカ域内の対立がエネルギー輸出に影を落としている。

天然ガス開発には莫大な投資が必要なうえ、鉱区取得から生産までに10年以上かかる場合が多い。ロシアのウクライナ侵攻が終わり、陸続きのロシアからガスを輸入できる環境に戻れば、欧州にとってアフリカへの長期投資が色あせる可能性もある。

温暖化対策との両立争点


アフリカは人口増と経済成長でエネルギー消費量が急増する。国際エネルギー機関(IEA)はアフリカの天然ガス需要が2050年に20年に比べ最大でほぼ倍増すると予測する。これは世界の6%を占め、日本の5倍にも及ぶ。天然ガスの開発や増産はアフリカが自らの需要を満たすためでもある。
IEAの21年の世界エネルギー見通しによると、各国政府の現在の計画を前提とした公表政策シナリオで、世界の天然ガス需要は20年から50年までに28%増える。アフリカは95%増で、減少傾向の欧米などと逆に伸びていく。
生産量の予測をみると、アフリカは同じ期間で8割増え、世界の9%を占めるようになる。アフリカ諸国は再生可能エネルギーにも投資する一方で、化石燃料の利用は自らの権利だと主張した。仏紙によるとアフリカ連合の議長を務めるセネガルのサル大統領は5月「アフリカは今後20~30年は巨大なガス埋蔵量を活用しなければならない。止めるのは不公平だ」と述べた。
温暖化対策で化石燃料からの脱却を急ぐ欧米などとの温度差は大きい。11月にアフリカで初めてエジプトで開かれる第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)でも争点になる可能性がある。
(カイロ=久門武史)

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