マクロン大統領、年金改革案発表へ 失敗なら求心力低下

【パリ=北松円香】フランスのマクロン大統領は10日に年金制度の改革案を発表する。大統領1期目に激しいストライキに阻まれて実現できなかった内政上の最大の課題だ。改革に再び失敗すれば、マクロン氏の求心力低下は避けられない。
「2023年は年金改革の年だ。今後長期にわたる年金システムの安定性を確保する」。マクロン氏は22年末、国民に向けた演説で新年の主な課題の一つとして現在62歳の受給開始年齢の引き上げなどを軸とする年金改革を挙げた。新制度は「23年の夏の終わりから適用する」との目標を掲げた。
もっとも労働組合の影響力が強いフランスで、痛みを伴う年金改革の合意は他の国にも増して困難な課題だ。大統領1期目の19年には鉄道職員が大規模なストに踏み切り、交通機関のまひが深刻化した。今回も当初予定の22年内に改革案がまとまらず、年明けの1月10日に発表を先送りした経緯がある。
ボルヌ首相が組合側と交渉を続けているものの反発は根強く、10日の改革案発表後に再びストが広がるおそれがある。ボルヌ氏は65歳までの定年引き上げが決まったわけではないとの見方も示しており、64歳に妥協して決着する可能性もある。
仏国民は総じて年金改革の必要性は認識している一方、負担増には消極的だ。調査会社のハリス・インタラクティブなどが年末に実施したアンケートによると、仏国民の53%が年金改革を優先的な課題と答えた。だが具体的な改革として6割以上の支持を得たのは「企業による寄与の増加」だけで、定年引き上げ賛成は37%にとどまる。