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EU、中国念頭に買収規制 外国政府支援の企業に通知義務

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記者会見する欧州委員会のベステアー上級副委員長(中)ら(5日、ブリュッセル)=AP

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は、中国への対応を念頭に企業買収の規制を強める。EUの欧州委員会は5日、外国政府から補助金などの支援を受けた企業がEU域内の企業を買収する際に通知を求める規制案を発表した。欧州は安全保障やハイテク分野で特に警戒を強めており、同国との距離が鮮明になっている。

「EUは開かれた市場だが、公正さは確保されねばならない」。5日の記者会見で、欧州委のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は力説した。この日発表した規制案は名指ししていないものの、中国対策なのは明らかだ。

EUは「単一市場」としての競争環境の公平さを保つために、加盟国政府が企業に補助金を厳しく制限している。このような状況の中で、中国政府からの補助金を後ろ盾に国営企業がEU企業を買収したり、安い価格で入札したりしている可能性があると、欧州の産業界が訴えていた。

規制案によると、外国政府から一定額以上の補助金を得た企業が、EU内での売上高が5億ユーロ(約660億円)以上の企業を買収する場合は欧州委への事前通知の義務を課す。2億5千万ユーロ以上の公共調達に参加する場合も同様だ。

補助金には直接の補助金のほか、無利子融資や税制優遇、無制限の保証なども含む。欧州委は通知を受け、競争がゆがめられる可能性があると判断すれば調査に乗り出す。世界貿易機関(WTO)のルールに抵触していないかなどが焦点になりそうだ。必要に応じて資産売却や補助金の返済などの是正措置を求めるほか、買収の阻止も可能にする。規制に違反した場合は、最大で年間売上高の10%の制裁金を科すことができる。

規制案は今後、EU27カ国と欧州議会で議論され、承認されれば法律になる。欧州の経済団体「ビジネスヨーロッパ」は5日の声明で「市場のゆがみを防ぐための正しい方向への第一歩だ」と歓迎した。中国政府や企業が反発するのは確実だ。

欧州では16年に発表された中国家電大手による産業用ロボット大手の独クーカ買収などをきっかけに、中国企業の買収に警戒感が高まった。EUは2020年12月に大筋合意したEUと中国との投資協定でも、補助金の透明性向上を盛り込んだ。

米国や英国なども中国を念頭に外国企業によるM&A(合併・買収)の規制強化を進めており、対中包囲網を構築しつつある。英国では4月、通信など重要分野の技術流出防止を目的とした「国家安全保障・投資法」が成立した。米国もトランプ前政権下でハイテク分野で中国企業との取引を制限するなど対中規制を強化し、バイデン政権もこうした路線を継承するとみられている。

EUは域内の産業政策でも経済安全保障を高めることに力を注いでいるが、これも中国を意識した政策といえる。欧州委は5日、コロナ禍で中国から医薬品やバッテリー関連の部品・材料の供給が一時寸断された問題などを受け、産業戦略を更新した。

「原材料」「バッテリー」「医薬品の材料」「水素」「半導体」「クラウド・エッジ技術」の6つを重要分野として、他国への依存度を下げながら、域内生産を含めて調達を多様化する。欧州委は半導体技術と産業データ関連について、官民連合を立ち上げる。すでにバッテリーや水素では設立済みで、バッテリーでは域内生産が進むなど一定の成果が出ている。

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