英中銀の使命に「脱炭素」追加 財務相が表明

【ロンドン=篠崎健太】英国のスナク財務相は3日、英イングランド銀行(中央銀行)の金融政策運営の使命に、温暖化ガス排出量の「実質ゼロ」社会への移行を加えると表明した。物価上昇率2%のインフレ目標とともに、金融政策や監督を担う中銀として気候変動問題にも積極的に対処していく責務を明確にする。
政策運営の責務として具体的に脱炭素を盛り込むのは、主要中銀では英国が初めてとなる。
スナク氏は議会下院に対する予算演説で、政府が指定する金融政策の使命について「今後は、環境の持続可能性と(温暖化ガス排出量の)ネットゼロへの移行の重要性も反映していく」と語った。
英政府は2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする法定目標のもと、関連政策を次々と打ち出している。ガソリン車とディーゼル車の新規販売を30年までに禁じる方針で、3日には個人向け環境債の発行計画も正式発表した。金融政策にもこうした政府の動きと歩調を合わせることを求め、イングランド銀のベイリー総裁宛ての書簡で通知した。
イングランド銀は「歓迎する」との声明を出し、金融緩和策として実施している社債の買い入れについて、数カ月以内に内容の見直しに向けた情報発信をすると明らかにした。購入対象の選定にあたり、企業の気候変動リスクや対応姿勢を考慮していくとみられる。中銀資産のグリーン化が鮮明になれば投資マネーの流れにも大きな影響を与えそうだ。

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