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OPECプラス、9月は小幅増産で合意 日量10万バレル

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【カイロ=久門武史、ワシントン=中村亮】石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は3日、9月に原油を日量10万バレル増産すると決めた。バイデン米大統領が7月のサウジアラビア訪問で増産を求めており、消費国に一定の配慮を示した。ただ世界の景気減速懸念やロシアへの配慮も背景に小幅な増産にとどまり、市場では実態は現状維持との見方が出ている。

OPECプラスは8月の増産幅を64万8千バレルとしていた。米国務省のエイモス・ホクスタイン上級顧問(エネルギー安全保障担当)は3日、CNNテレビのインタビューで、今回の増産合意は米国内のガソリン価格に大きな影響を及ぼさないとしつつも「正しい方向の措置だ」と述べた。

OPECプラスは2020年に新型コロナウイルスによる需要急減で大幅な協調減産に踏み切り、21年から段階的に減産を縮小(増産)してきた。今年6月の協議で7~9月の3カ月分を7、8月に前倒しで増産すると決めたことで、9月までの予定だったコロナ禍対応の生産調整は8月で終わるとの認識が市場で広がっていた。

消費国が増産を訴える半面、インフレや米欧の利上げで世界景気が減速し原油需要が鈍る懸念がくすぶる。OPECプラスの一部産油国は投資不足で生産目標割れが続き、供給拡大に限界がある事情もあって小幅増産にとどめた。次回協議は9月5日に開く。

米国・ロシアに配慮、苦肉の「現状維持」


石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えた「OPECプラス」が3日に決めた9月の原油増産幅はごく小規模で、実態は「現状維持」が続くにすぎない。バイデン米政権の増産要請に応える姿勢はみせつつ、既に増産が難しく需要鈍化も懸念される実態に合わせた苦肉の策だ。

OPECプラスの3日の閣僚協議は、バイデン氏が7月にOPECを主導するサウジアラビアを訪れ増産を求めてから初の会合だった。ロシアのウクライナ侵攻などで原油相場は1年前より3割高く、11月の米中間選挙を前にガソリン高対策を急ぐバイデン氏にとって追加増産を引き出せるかが重要なテーマだった。

ただ9月の増産幅は日量10万バレルと8月よりさらに小さく、OPECプラスの8月の生産計画から0.2%あまり増えるにすぎない。世界需要と比べるとわずかに0.1%だ。ニッセイ基礎研究所の佐久間誠氏は「米国の増産要請に一応は対応したという形にする一方で、事実上の原油需給へのインパクトはほとんどゼロだ」とみる。

OPECプラスの増産が小幅にとどまったのを受けて、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は3日、一時1バレル96ドル台半ばと前日終値比2%上昇した。

OPECプラスには需給と政治的思惑の両面で大幅に増産する理由が乏しい。まず急な増産の計画を決めても実行が難しい。協議後の声明では「極めて限られた生産余力」に触れ「その利用には重大な注意を必要とする」と警告した。

既にナイジェリアなどが投資不足による生産目標割れが長引き、OPECプラス全体でも生産実績が計画に届かない状態が続く。国際エネルギー機関(IEA)によると、6月の生産量は目標に対し日量300万バレル弱足りなかった。増産余力を持つサウジとアラブ首長国連邦(UAE)も能力の上限に近づきつつある。

世界的な景気減速による原油需要の鈍化が意識されているのも懸念材料だ。国際通貨基金(IMF)は7月、世界の2022年の実質成長率見通しを前回見通しの3.6%から3.2%に下方修正した。インフレやそれに対応する米欧の利上げが逆風となる。中国の新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)も原油需要に影を落とす。

IEAは7月の月報で、世界の原油需給は22年4~6月に日量110万バレルの供給過剰に転じたと指摘した。22、23年の需要予測を下方修正し、供給過剰が当面続くとの見方を示した。ロシアの生産が想定より減っていないことも、足元で供給過剰になっている背景だ。

OPECは米国が期待した大幅な追加増産をのまなかったことで、ウクライナ侵攻で米国などの制裁を受けるロシアとの協力関係を重視する姿勢を重ねて示した。1日にOPEC事務局長に就任したハイサム・ガイス氏はクウェート紙に「ロシアは戦略的パートナーだ」と述べた。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之氏は今回の決定について「ロシアに配慮して増産への慎重姿勢を堅持した。供給によほどの懸念が生じない限り、OPECは動かないことを改めて印象付けた」と分析する。

今後も原油を巡り米国とロシア、OPECプラスによる駆け引きが続く見通しで、商品市場も神経質な展開が続きそうだ。小幅増産を受けて急騰した原油先物価格は一時、1バレル91ドル台まで下げる場面もあった。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間の石油在庫統計で原油とガソリン在庫が市場予想以上に増加し、供給への懸念が後退したことが価格を押し下げた。

(カイロ=久門武史、コモディティーエディター 浜美佐)
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