ウクライナ穀物輸出4分の1に 黒海封鎖、足止め100隻

【ワルシャワ=久門武史】ウクライナ政府は3日、ロシアによる黒海の港の封鎖で、3月の主な穀物の輸出量が前月の4分の1に急減したと表明した。黒海では外国船籍の100隻以上が足止めされているもようだ。ウクライナは世界5位の小麦輸出国。穀倉地帯からの海運停滞で食糧価格の高止まりが懸念される。
- 【関連記事】小麦、迫る「夏の崖」 ウクライナ危機で供給懸念
ウクライナ経済省は3日、3月のトウモロコシの輸出量が110万トン、小麦は30万9千トンと「2月の4分の1だ」と発表した。「輸出ルートだった黒海の港がロシアに封鎖された」と強調した。英国防省も同日「ロシア海軍が黒海とアゾフ海のウクライナ沿岸で封鎖を維持している」との分析を明らかにした。

ロシアが2月24日にウクライナに侵攻して以降、海運各社は相次ぎ同国への入港を止めたが、現地で動けずにいる船も多い。海運情報を提供する英ロイズ・リスト・インテリジェンスは3月下旬、外国船籍の128隻がウクライナから出港できずにいると公表した。ウクライナとロシア両国の船籍を含めると300隻以上としている。
黒海では民間船舶の戦闘被害が相次ぎ、エストニアの貨物船が3月初めに沈没したと伝えられた。国際海事機関(IMO)は3月中旬、ロシアによる商船攻撃を非難し、船舶を逃す「海上回廊」の設置を求めた。地上で市民を逃す「人道回廊」になぞらえ、洋上でも停戦と安全確保を求めた。しかし両国軍の協力が必要で、実現の見通しは立たない。
ウクライナ政府は輸出の代替ルートの確保を急ぐ。3月末、ルーマニア政府に同じく黒海に面するコンスタンツァ港の利用を打診した。国境を接するルーマニアへの陸上の交通は開かれており、主要港のあるオデッサなどから多数の難民が陸路で同国に逃れている。
封鎖とは別に海運を脅かしているのが、黒海に流出した多数の機雷だ。3月26日と28日、トルコとルーマニアの海軍がそれぞれ漂流していた機雷計3個を除去した。このうち1つは海上交通の要衝、トルコのボスポラス海峡の北側で発見された。
ロシア連邦保安局(FSB)は3月19日、ウクライナの複数の港周辺で同国海軍の機雷420個を係留していたケーブルが切れ、機雷が流出したと主張した。「風と潮流で機雷は黒海の西側で漂流している」と表明した。
ウクライナ側は、海域を封鎖するためのロシアの偽情報だとして否定した。英国防省は「機雷の流出元は不明だが、同海域でのロシアの活動に起因するのはほぼ確実だ」との見方を示している。
ロシアとウクライナの小麦輸出は合わせて世界の3割を占める。戦闘の長期化で供給不安は募る。穀物を輸入に頼る中東アフリカ諸国などが代替調達に奔走し、小麦の国際価格は3月に約14年ぶり高値をつけた。最大の輸入国エジプトでは、主食のパンの値上がりで政府が価格統制に乗り出した。
ロシアとウクライナの制海権を巡る争いは、地上戦に比べ情報が乏しい。ただロシアが沿岸部の掌握を狙っているのは確実で、ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリに執拗に包囲攻撃を続け、2014年に併合したクリミア半島に隣接するヘルソン州にも攻勢をかけた。ロシア海軍はウクライナ侵攻に先立ち、東地中海に艦船を集めたと指摘された。
【関連記事】
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)

2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年になります。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
■戦況
■マーケット・金融への影響
■ビジネスへの影響