/

独軍艦が東京寄港、5カ国で共同演習 対中外交に変化

think!多様な観点からニュースを考える

【ベルリン=石川潤】ドイツ北部を8月に出港し、インド太平洋地域に到達した独海軍のフリゲート艦「バイエルン」が5日、東京に入港する。独海軍によると、12日まで東京にとどまり、その後、日米豪カナダと20隻の艦船が参加する共同演習などに加わる予定だ。当初は中国を刺激しないため、上海にも寄港することを提案していたが、中国側に拒否された。

海外領土を持たないドイツが軍艦をインド太平洋に派遣するのは極めて異例だ。日米豪などの民主主義の価値観が共通する国との連携を強化する狙いがある。中国側と蜜月といわれたメルケル首相の退任が迫るなか、ドイツ外交に変化が目立ち始めた。英国やフランスも同地域への軍艦派遣などを進めている。

独政府は2020年9月にインド太平洋外交の指針(ガイドライン)を閣議決定し、日本などとの関係強化に動き始めた。きっかけとなったのが、中国が南シナ海などで覇権主義的な動きを強め、香港、新疆ウイグル自治区で人権問題が浮上したことだ。米中対立が激しくなり、中国に依存しすぎることへの警戒も強まった。

ドイツにとって中国は最大の貿易相手国だが、技術移転の強要などへの不満が産業界に広がっている。ドイツ産業連盟(BDI)は21年7月公表のリポートで「貿易による変革という理念は限界に突き当たった」と指摘した。経済で緊密な関係を築けば、自由経済や民主主義が自然に根付くという従来の考え方が甘かったことを認めた。

今後の焦点は、メルケル氏の引退後にドイツの対中政策がどう変わるかだ。9月に総選挙を実施したドイツは連立協議の真っただ中で、ドイツ社会民主党(SPD、社民党)、緑の党、自由民主党(FDP)による3党連立が有力となっている。

3党が連立の事前協議でまとめた12ページの合意文書に「中国」という文言は一度も登場しない。ただ、権威主義的な国々とのシステム競争を念頭に、民主主義の価値観を共有する国と緊密に連携を進めることが明記された。

独ボン大学で国際関係が専門のマクシミリアン・マイヤー氏は「緑の党とFDPはここ数年、中国に対してメルケル政権と異なる姿勢を打ち出してきた」と話す。緑の党は人権を、FDPは厳格な自由市場のルールを強調する立場で、両党が参加する新政権は中国により厳しい姿勢を採る可能性があるという。

ただ、新政権が経済的な不利益を覚悟してまで、どこまで人権などの原則論を貫けるかは不透明だ。独中経済の深い関係は一夜では変わらない。実際にはフランスなどと足並みをそろえつつ、欧州全体での行動を探るとの見方が多い。第1党になった社民党と同党の首相候補、ショルツ財務相は親欧州の立場だ。

ドイツにとってインド太平洋は遠い。今回の軍艦派遣は台湾海峡は通らず、南シナ海だけを通過する見通しだ。「パートナーとともに旗を掲げる」(クランプカレンバウアー国防相)と言うが、中国を過度に刺激したくないという思惑もにじむ。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • この投稿は現在非表示に設定されています

    (更新)
    (0/300)
(0/300)
投稿内容をご確認ください
投稿チェック項目誤字脱字がないかご確認ください
投稿チェック項目トラブル防止のため、記事で紹介している企業や人物と個人的つながりや利害関係がある場合はその旨をお書き添えください
投稿チェック項目URLを投稿文中に入力する場合は、URLの末尾にスペースか改行を入れてください
詳細は日経のコメントガイドラインをご参照ください

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン