ロシア、5月の「勝利宣言」意識か 南・東部制圧へ攻勢

【ワルシャワ=久門武史】ロシア国防省は3日、ウクライナ南部オデッサ周辺の製油所と燃料貯蔵施設にミサイル攻撃を加えたと発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領は2日の国民向けビデオメッセージで「ロシアは(東部の)ドンバス地方と南部の制圧を狙っている」と述べ、徹底抗戦の構えをみせた。
ロシア軍は苦戦した首都キーウ(キエフ)周辺から部隊を再配置し、ウクライナ東部と南部への攻勢に軸足を移している。タス通信によるとロシア軍の報道官は3日、攻撃した石油施設について「ウクライナ部隊に燃料を供給しており、海空から発射したミサイルによる精密攻撃で破壊した」と述べた。死傷者は伝えられていないが、市民生活に影響が及ぶ恐れがある。
米CNNは米政府当局者の話として、ロシアが5月上旬までにウクライナ東部の制圧を目指していると報じた。米情報機関が傍受した情報によると、ロシアにおける第2次世界大戦の対独戦勝記念日である5月9日にあわせてプーチン大統領が「勝利」したとアピールする必要に迫られ、東部の掌握を戦果にしようとしているという。
キーウ周辺ではウクライナ軍が主導権を取り戻しつつあるが、ゼレンスキー氏は撤退したロシア軍が「すべての地域に地雷をしかけている。住宅や器物、遺体にまでしかけている」と述べ、市民にすぐに帰還しないように呼びかけた。
ロシア軍が撤退したキーウ近郊で報じられた多数の民間人の犠牲を巡る責任追及も今後の焦点になる。トラス英外相は2日、ブチャなどでの残虐行為に関し「ロシア軍が無実の市民を標的にしたという報告は忌まわしい」と投稿した。戦争犯罪として捜査すべきだと訴えた。国際刑事裁判所によるロシア軍の戦争犯罪の捜査を支援する意向も示した。
欧州連合(EU)加盟国のエストニアのカラス首相は「ロシアによるウクライナ民間人の集団殺害は明らかな戦争犯罪だ」と非難。EUの強力な制裁が必要だと訴えた。
ロシアとウクライナの停戦交渉では、合意案を巡る調整が続いている。ロシアとの停戦交渉に臨んでいるウクライナ代表団のアラハミヤ氏は2日、地元メディアに協議が進んでいると表明。プーチン氏とゼレンスキー氏の首脳会談がトルコで開かれる可能性にも言及した。
ただ、ロシア代表団トップは3日、現在の停戦合意案は首脳レベルの会談に提示する段階にはないとの認識を示した。ロシアとウクライナは3月29日にトルコのイスタンブールで対面形式の停戦協議を実施し、その後はオンラインで対話を続けている。
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