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産油国、増産余力乏しく ロシア供給不安で原油に先高観

石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えた「OPECプラス」は2日、3月も現行の段階的な増産を続けると決めた。ロシアの供給がウクライナ情勢次第で滞るとの懸念から原油高が進むが、供給余力のある国は少ない。増産ペースを上げる機運はなく、先高観はなお強い。

OPECプラスはオンラインで開いた閣僚協議で、毎月日量40万バレルずつ増産する現行方針を再確認した。開始から30分あまりで声明を出し、ウクライナ情勢を巡るシナリオ分析に時間をかけた形跡はない。

WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は同日、一時1バレル89ドル台と約7年4カ月ぶりの高値をつけた。相場を押し上げたのは、ロシアがウクライナに侵攻すれば欧米が制裁に踏み切り、ロシア産エネルギーの供給が滞るとの懸念だ。現実の危機になった場合、代わりにすぐに増産できる産油国は少ない。

ナイジェリアなど一部のOPEC加盟国は投資不足や生産設備の問題から生産が停滞し、今の増産計画でさえ未達が続く。国際エネルギー機関(IEA)とOPECのデータをもとにした推計では、昨年12月はOPECプラス全体で生産目標に対し日量90万バレルほど不足。2020年5月に協調減産を開始して以降、生産量が目標を上回った月はほんのわずかだ。

昨年12月はロシアの生産量も目標に届かなかった。毎月日量10万バレルずつ増産する割り当てだが、原油安局面での投資不足が響き、能力が追いつかないとの指摘が多い。OPECプラスで日量100万バレル超の増産余力を持つのは事実上、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)だけだ。

米国など消費国はかねて原油高を警戒し追加増産を求めてきた。OPECプラスは拒み続けている。市場では原油価格の1バレル100ドル超への高騰を予測する声もある。石油離れが加速しかねない油価の急騰はOPECプラスも望まないはずだが、追加増産を訴える国は表向きない。

発言力の強いロシアがウクライナを巡る当事者で、増産を望んでいる欧米と対立している点も見逃せない。増産余力が乏しいなかで石油収入を伸ばすには価格を高止まりさせる必要もあるため「ロシアがOPECプラスの増産拡大に反対しやすい環境になっている」(野村証券の大越龍文シニアエコノミスト)。

ロシアは欧州が輸入原油の3割を頼るエネルギー源だが、世界最大の産油国である米国にとっても無視できない存在だ。米エネルギー情報局(EIA)によると、21年1~11月のロシアからの原油・石油製品の輸入量は平均で日量70万バレル弱。親米国サウジからの輸入より多く、輸入全体の約1割を占めた。

米国が重質で硫黄分の高い原油を産出するベネズエラに経済制裁を科し、代わりに性質の似たロシア産の輸入を増やしたからだ。

地政学的な緊張で、原油は戦略商品としての重みを増している。ロシアが米欧と神経戦の最中に切り札の価値を下げる理由はない。他国もロシアと反目してまで、追加増産を唱えたくはない。国別生産枠の見直しは、増産できる国とできない国とで内輪もめの火種にもなる。

仮に今後ウクライナ問題が落ち着いても、産油国の増産余地の乏しさが解消されるわけではない。UAEは親イラン武装組織フーシ派からの攻撃を繰り返し受けており、石油関連施設が被害を受けるリスクがある。高い原油価格は当面続きそうで、インフレ圧力を通じた世界経済への逆風も強まりそうだ。

(カイロ=久門武史、蛭田和也)

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