ザンビア債務再編交渉入り、中国が合意 IMF支援に道

【カイロ=久門武史】アフリカ南部のザンビアの債務問題で、中国が主導する債権国グループが債務再編の交渉入りに合意した。国際通貨基金(IMF)によるザンビアへの資金支援に道を開く。債務危機に直面する低所得国の救済で、中国が他の債権国と協調する先例になる可能性がある。
中国とフランスが共同議長国を務める債権者委員会は「債権の再編の条件をザンビアと交渉することを確約する」とこのほど表明した。20カ国・地域(G20)が用意した債務軽減の枠組みを活用する意向を示した。G20議長国のインドネシアが7月30日に声明を公表した。同委員会は7月中旬にIMF、世界銀行を交えて協議していた。

中国は広域経済圏構想「一帯一路」でアジアやアフリカに積極的に融資し、巨額のインフラ開発を進めてきた。融資条件は不明な場合が多く、債務再編では借り手と1対1の交渉を好むとされてきた。多額を貸し付けたスリランカが経済危機に陥るなか、ザンビアへの対応は債務減免など損失の受け入れにつながる動きとして注目されている。
IMFのゲオルギエバ専務理事は「債権者委員会の支援は、IMFにとって公的な金融面の保証となる」と歓迎した。そのうえでIMFが「ザンビアへの支援プログラムの承認を検討できるようになる」とした。IMFは2021年末にザンビアとの間で、債務削減を条件に3年間にわたり約13.4億ドル(約1780億円)を融資することで基本合意していた。
ザンビアは20年、ドル建て国債の利払いができず、新型コロナウイルス禍による債務不履行(デフォルト)にアフリカで初めて陥った。財務省の資料によると21年末時点で対外債務残高は約170億ドルにのぼる。最大の貸し手が中国で、対中債務は計60億ドルとの推計がある。
ザンビアでは21年8月、空港や道路などのインフラ整備に熱心で債務を膨らませてきたルング前大統領に代わり、野党の指導者だったヒチレマ大統領が就任した。ヒチレマ氏はIMFから支援を引き出す交渉を精力的に進めたほか、中国の債権者を欧米の債権者より優遇することはないとの方針を明らかにしていた。
ムソコトワネ財務相は7月30日の声明で「経済改革を実行し、債務の透明性を高め債権者に公平に対応する」と強調した。直前にザンビア政府は借入資金で計画していたプロジェクトの中止を発表した。この資金は合計20億ドル相当で、中国輸出入銀行など中国の金融機関による融資が大半を占めると報じられた。
債務再編を巡っては、ザンビアは民間の債権者とも妥結する必要がある。債権者委員会もザンビアとの速やかな交渉を促しているが、ドル建て国債を保有する民間債権者の間には、民間は債権国に比べ情報が足りないと懸念する声もあがっている。