OPECプラス、3月も増産ペース維持 原油7年ぶり89ドル

【カイロ=久門武史】石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は2日、現行の原油増産ペースを3月も継続すると決めた。段階的な増産にとどまるとの見方から、ニューヨーク市場の原油先物が上昇し、一時1バレル89ドル台と約7年4カ月ぶり高値をつけた。
OPECプラスは同日オンラインで開いた閣僚協議で、毎月日量40万バレルずつ増産して新型コロナウイルス禍での協調減産を縮小していく現行計画を据え置いた。次回協議を3月2日に開く。
バイデン米政権は燃料高を嫌い大幅な追加増産を訴えてきたが、OPECプラスは重ねて拒んできた。主導するサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は1月中旬に「(市場の)安定にOPECプラスは多くのことをなし遂げてきた」と現行の段階的な増産の意義を強調した。
サウジと並ぶ主要メンバーのロシアは、ウクライナ情勢で対米関係が緊迫する今、制裁をちらつかせるバイデン氏の期待に応えて軟化する理由はなおさら乏しいとの見方がある。
コロナ禍で急減した原油需要が回復しているうえ、最近相次ぐ地政学的な緊張が価格を押し上げている。ロシアのウクライナ侵攻が懸念され、欧米との対立で資源国ロシアのエネルギー供給が滞るとの警戒感が強まった。中東ではアラブ首長国連邦(UAE)にイエメンの親イラン武装組織フーシ派が1月だけで弾道ミサイルなどの攻撃を3回仕掛け、国営石油会社の施設も狙われた。
ナイジェリアなど一部のOPEC加盟国で投資不足や生産設備の問題から生産が停滞し、現行の増産でさえ計画に届いていない事情もある。国際エネルギー機関(IEA)によると、昨年12月はOPECプラス全体で生産目標に対し日量79万バレル足りなかった。
世界的に新型コロナの変異型「オミクロン型」の感染が急増したが、原油需要への打撃は限定的だとの認識が広がっている。IEAは1月の月報で「感染急増が石油の消費に与える影響は穏やかだ」と指摘し、当初考えていたような需要の下押しにはつながらないとの見方に転じた。22年の世界の需要は前年比3%増の日量9971万バレルと予測している。
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